これまでソ連崩壊、リーマンショック、トランプ⼤統領誕⽣などを次々に予⾔してきた歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏。2024年1⽉にフランスで刊⾏された『⻄洋の敗北』は世界27カ国で翻訳され、⽇本語版も10万部超のベストセラーとなっている。
文藝春秋PLUSの緊急インタビューに応じたトッド氏は、アメリカと日本の関係や台湾有事について率直な発言を行った。20年来の持論である核武装論の真意とともに、日本の「想像上のナショナリズム」を鋭く批判する。通訳は慶應義塾大学名誉教授の堀茂樹氏。(全2回の2回目/はじめから読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年3月9日配信)
「日本とドイツはアメリカ帝国の一部」
文藝春秋PLUSの緊急インタビューで、世界における日本の立ち位置を問われたトッド氏はまず前提を次のように述べた。
「今でも日本とドイツはアメリカ帝国の支配下の一部です。完全に独立国とは言えない状態にある」
トッド氏の分析によれば、アメリカ帝国はヨーロッパ、中東、東アジアの3つの柱で成り立っている。ヨーロッパではウクライナ戦争を通じて混乱を生み、中東ではイラン攻撃で同様の事態が進行している。トッド氏は台湾有事の問題が同じ構図の延長線上にあることに言及する。
トッド氏からの助言はシンプルだった。
「日本はその紛争、力関係のせめぎ合いの外に位置することが賢明だ」
台湾問題への関与は日本にとって「重大なリスク」であると警告した。
台湾は地政学的に中国の空間に属している
トッド氏は日本と台湾の歴史的な絆にも言及した。後藤新平による台湾統治が比較的成功だったこと、その結果として日本人が台湾に親しみを感じていること——日本人は国民感情としては台湾を独立した国のように認識している。
しかし、現実の事情は異なるとトッド氏は述べる。
「歴史の推移の中で台湾は中国に支配されているわけではないが、地政学的には中国の空間に属している」
日本の空間には属していないという認識のもと、「日本が台湾有事の時に関与すべき国だと捉えるのは危ないし、正しい認識ではない」と断じた。
