韓国で人気が高いのは『冬のソナタ』ではなく…

『冬ソナ』はよく言われてきたように、「出生の秘密」「交通事故」「記憶喪失」など、突拍子もない設定や展開が盛りだくさんであることも確かだ(ここが、70年代の日本のドラマ「赤いシリーズ」に似ているといわれていた)。だが、当時の韓国経済の成長ぶりとも関係していたのだと思うが、2000年代の韓国ドラマは、全体的に荒い作りであっても、どこかひとつ光るポイントがあれば、それだけでぐいぐいもっていってしまうような勢いがあった。その光るポイントが、『冬ソナ』の場合、“純愛”だったのである。

 そんな『冬ソナ』には、韓ドラ的ではない部分もある。それは、貧困がほぼ描かれていない点だ。

『映画 冬のソナタ 日本特別版』公式Instagramより

『冬ソナ』は、ユン・ソクホ監督が手がけたドラマシリーズ「四季シリーズ」の中の一作で、ほかに『秋の童話』『夏の香り』『春のワルツ』といった作品があるが、実は韓国をはじめとしたアジア各国で人気が高いのは『秋の童話』だ。『秋の童話』にはかつての、そして今も韓国ドラマで鉄板の設定である、貧しい家庭が登場する。日本で『冬ソナ』のほうが圧倒的に受け入れられたのは、貧困という暗いテーマがない分、当時の視聴者に届きやすかったからかもしれない。

ADVERTISEMENT

「伏線回収ドラマ」としての面白さ

 そのほかにも、登場人物の心の動きの繊細な描写、メモを取りたくなるようなセリフ、20代の大学生が音楽監督を務めた劇中曲など、細かく見るとたくさんの魅力が挙げられるが、『冬ソナ』未視聴の人には思いつかないであろう特徴といえば、ストーリーにミステリー的な面白さが多分にある点だ。

「チュンサンの父親は誰か」「瓜二つのチュンサンとミニョンはどんな関係なのか」「親世代の因縁とは?」……といった謎が、節々で顔を出しハラハラさせる。そのハラハラが、純愛物語の緊張感をさらに高めていく仕掛けにもなっている。

 また、昨今の韓国サスペンスは「伏線を回収する」ことが強く問われるようになったが、意外にも『冬ソナ』はその先駆けのような面がある。「道に迷ったらポラリスを探すんだ」といった序盤のセリフなどが伏線となり、物語への没入感を高めていくのだ。