SNSで注目を集める一人の女性がいる。全長約90cmの長い包丁を手に、160kg超の巨大マグロをさばく高橋李奈さん(31)だ。「ツナプリンセス」として知られる彼女の動画は140万回再生を超え、その姿に外国人観光客は「She is SAMURAI.」と息をのむ。

 デザイナーから完全未経験で水産業界に飛び込み、今や築地のマグロ仲卸業者「キタニ水産」のベテラン社員となった高橋さん。彼女の独自の戦略は、1日3万円前後だった店頭販売の売上を最高70万円にまで押し上げた。朝4時出社でも「お化粧をして店頭に立つ」と語る彼女の覚悟とは、一体どのようなものなのだろうか。

高橋李奈さん ©杉山拓也/文藝春秋

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店長から「本気でやらねえんだったら帰れ!」と怒鳴られたことも

 高橋さんの本業は仲卸の営業であり、マグロの解体は客に買ってもらうための仕事だ。入社当初、技術も力もなかった彼女を待っていたのは、厳しい修業の日々だった。

 利益を損なう失敗をすれば、店長から「本気でやらねえんだったら帰れ!」と怒鳴られることもあったという。それでも彼女は「どんなに怒られても逃げない、負けない。私は必ずやれる人間だ」と食らいついた。

 

1日の売上は最高70万円を叩き出すまでに

 技術がない自分が会社に貢献できることは何か。彼女が目をつけたのは、泥臭い仕事と、手薄だった店頭販売だった。排水溝の掃除やゴミ捨てを率先して行い、デザイナー経験を活かして商品のポップを手作りした。

 さらに、客の顔と名前をメモし、「この間はありがとうございました!」と声をかけ、自作の魚料理を試食してもらうなど、地道な努力を重ねた。ここには「お客様だと、いつかは買ってくれなくなるかもしれない。でも、ファンになってもらったら、ずっと買ってくれるはずだと思ったんです」という、彼女なりの戦略があった。

 その甲斐もあって、1日の売上は最高70万円を叩き出すまでに成長した。宮下店長は「人の懐に入るのがうまい」と彼女を評価する。

 

「朝が早くても、お化粧をして店頭に立つ」理由

 そんな高橋さんが意識しているのは、「朝が早くても、お化粧をして店頭に立つこと」だという。

「『仕事一本、すっぴんで頑張ります!』っていうのは、私が目指していた姿じゃないなって。実際、化粧をして綺麗にしていた方が、お客さんも『この人から買いたい』と思ってくれて、売上も変わる。私にとっての『女性であること』を諦めたくないんです。その方がストレスもたまらないですから」

 仕事に本気で向き合い、きれいになることも楽しむことも諦めない。人に慕われる策略家でもあるサムライは、今日も築地で戦っている。

 

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