大きなマグロを次々と解体していく女性が、SNSで注目を浴びている。高橋李奈さん、31歳。「ツナプリンセス」として知られる彼女の動画は、140万回再生を超える。
25歳までデザイナーとして働いていた彼女は、なぜ完全未経験から「マグロ解体師」を目指したのか。「女の子には難しい」と断られ続けても諦めなかった理由とは――。フリーライターの池田アユリ氏が取材した。(全2回の1回目/2回目に続く)
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外国人観光客から「She is SAMURAI.(彼女は、サムライだ)」と…
朝7時。築地の店頭で、一人の女性が、全長約90cmの太刀(たち)と呼ばれる長い包丁を握る。重さ160キロ超の大きな本マグロと向き合うその姿に、傍で見守る外国人観光客がこう言った。
「She is SAMURAI.(彼女は、サムライだ)」
彼女こそ、SNSで「ツナプリンセス」として知られ、YouTubeの密着動画が140万回以上の再生数を叩き出している高橋李奈さんである。
豊洲・築地のマグロの仲卸業者「キタニ水産」では、豊洲市場でマグロや鮮魚を競り落とし、築地の店舗で解体・販売を行っている。未経験から飛び込んだ彼女は、そこでマグロの解体や鮮魚の買い付け、販売を担当。今年で7年目、後輩指導にもあたるベテラン社員だ。
マグロを解体する時の張り詰めた雰囲気とは打って変わり、李奈さんは人懐っこい笑顔で、通りゆく観光客に「昼ごはん食べましたか?」「うちの海鮮丼、試してみませんか!」と声をかける。李奈さんはファンが足繁く通うほど人気があり、築地の“ツナプリンセス”というあだ名が浸透している。
「魚をさばく女性はかっこいい」デザイナーからマグロ解体師に
だが、彼女のキャリアの始まりは、地元・新潟県にあるデザイン事務所のデザイナーで、手取り11万6000円からのスタートだった。それでも充実した生活を送っていたが、ある日、「学生時代の友人に比べると給料が少ない」と気づいた彼女は、「楽しくて、しっかりお金も稼げる仕事がしたい」と転職を決意。
「ライバルが少ないブルーオーシャン、なにより魚をさばく女性はかっこいい」と思ったことからマグロ仲卸業者に応募の電話をかけ、何度も門前払いをされながら、この場所に飛び込んだのである。
「『女の子には難しいし無理だよ』って、5軒連続で断られました。『ですよね』って1回は受け入れました。でも、でっかい魚のマグロをさばけたら、絶対かっこいいじゃないですか!
私、『本気でやれば絶対できる』っていう成功体験があったので、『マグロ、ちょっと本気でやってみよう』って思ったんです。だから、無理だと言われても諦めませんでした」
己の道を切り拓いてきた李奈さんの半生と、「女性であることも、カッコよくあることも諦めたくない」と語る、その原動力を聞いた。




