“伝説のヤクザ”として名を馳せ、のちに映画俳優としても活躍した安藤昇。その女性遍歴は数知れないが、中でも女優・瑳峨三智子との関係は印象的なものだった。偶然の出会いをきっかけに男女の関係になるが、安藤にとっては数いる女性のひとりにすぎなかった――。
それでも続いたふたりの関係。その背景に何があったのか。大下英治氏の著書『安藤組 修羅たちの戦い』(宝島SUGOI文庫)より、その実像をひもとく。(全3回の1回目/2回目につづく)
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いざ対面するや「惚れてしまった」安藤と瑳峨の関係
映画俳優・安藤昇の女性のモテ方は、やはり尋常ではなかった。
無数の艶聞のなかでも、女優・瑳峨三智子との恋愛は大きな話題を世間に提供した。この時期、瑳峨は安藤昇主演作品に出演することになる。
もちろん、当時の瑳峨三智子は、名女優・山田五十鈴を母に持つ類い希な美貌と将来性を持った女優であったが、重要でない役への配役も多かった。必ずしも瑳峨本来の精彩を放っていたわけではなかった。
安藤との接点は、瑳峨が太平洋テレビの所属女優だったことに始まる。当時の瑳峨は、三十路超えの女盛りであった。
2人の出会いをセットしたのは、太平洋テレビの清水昭社長であった。清水は、2人が同じ太平洋テレビ所属俳優ということで、一度は顔を合わせておいてもいいだろうという軽い気持ちであった。
瑳峨は、初め嫌がった。が、安藤のほうは、瑳峨を女優として尊敬していたので、「ぜひに」と言ったという。
しかし、安藤と会うことに乗り気でなかった瑳峨は、いざ安藤と対面するや、その考えを一変させる。つまり、瑳峨のほうが安藤に惚れてしまったのである。
当の安藤にとっては、瑳峨は5、6人いる愛人の1人、つまり「ワン・オブ・ゼム」にすぎなかったのだが……。
そもそも安藤からすれば、瑳峨タイプの女性に熱をあげることはなかった。とはいえ、安藤は、生涯どんな女性に対しても自分から惚れて、追い回したことがないというのだから、瑳峨三智子への評価が必ずしも低いわけではない。どんな男でも、あの妖艶な瑳峨三智子に迫られて、断る者はまずいまい。安藤ならではの、山の手の江戸っ子特有のストイシズムとハニカミから「嫌ではなかった」というわけであろう。
