ベルギーの巨匠・ダルデンヌ兄弟(ジャン= ピエール&リュック・ダルデンヌ)の最新作『そして彼女たちは』(2025)は、若くして妊娠した女性たちを支援する施設で暮らす、5人の女性たちが主人公となる。彼女たちは貧困、パートナーの不在、両親からの愛情の欠落など、それぞれに問題を抱えているが、葛藤を経て、やがて自分たちの道を歩んでいく。5人の女性たちに常に寄り添うような、優しげな息づかいが全編に感じられる本作。ドキュメンタリーからそのキャリアをスタートさせた、兄弟にとってははじめての「群像劇」となるが、国内外で高い評価を受け、カンヌ国際映画祭では脚本賞&エキュメニカル審査員賞の2冠に輝いた。今回、映画公開に合わせて来日した兄弟にインタビューを行った。(通訳:永友優子)

ダルデンヌ兄弟

◆◆◆

はじめての「群像劇」という挑戦

――「親になる」ことの葛藤を描いた作品としては、恋人とのあいだに子どもができるものの、「親」であることの自覚が生まれず、無軌道な生活を続ける青年を描いた『ある子供』(2005)以来かなと思います。また、父親の犯罪の片棒を担ぐことを余儀なくされる少年を描いた『イゴールの約束』(1996)をはじめ、ダルデンヌ作品では親子の関係を軸とするものは多いですね。

ADVERTISEMENT

『そして彼女たちは』

リュック これは私たちの強迫観念かもしれないですね。小説家であれ、舞台演出家であれ、ひとつのテーマに長い期間にわたって挑む方たちは多いと思うのですが、私たちにもそうした姿勢は当てはまります。ただ、その中でもアクセントの違いは意識しています。たとえば『少年と自転車』(2011)は育児放棄された少年と、彼の里親になる女性との関係を描きましたが、今回は血のつながりはありながらも、「母親」になることに困難を抱えている若い女性たちの物語となっています。