――5人の背景はさまざまです。生まれた子を養子に出そうとするアリアンヌ、パートナーに捨てられたぺルラ、かつて母親に養子に出されたジェシカ、母親になることができるか不安にさいなまれるジュリー、シングルマザーになることを決意するナイマ。彼女たちの造形はどのように考えられたのでしょうか。
ジャン= ピエール まず、私たちが複数の人を主人公にした物語--いわゆる「群像劇」を撮ることは、キャリアにおいてはじめての挑戦でした。その上で意識したのは、彼女たち5人の物語を記号のように扱ってはならないということです。映画を撮る過程では、映画の全体的な整合性はもちろん重要ですが、そのために彼女たちの個別の物語を、軽視する形にしてはならないと思いました。
先行する映画として私たちの頭にあったのは、溝口健二の『赤線地帯』(1956)です。売春宿を舞台に、さまざまな娼婦たちの物語が描かれますが、映画においては、舞台としての売春宿が活写されつつ、娼婦たちのそれぞれの背景も綿密に描かれています。その点で、『赤線地帯』から学んだことは大きかったですね。
また「個別の物語を軽視しない」というのは、倫理の問題のみには留まりません。私たちが母子支援施設を訪れた際に気づいたのは、若い母親たちが同じ場所で暮らしつつも、根底の部分で深い孤独感を抱えているということでした。また、彼女たちが抱える問題は、ほかの誰かが力になれる面はありつつも、最終的には彼女たちが自分の手で解決しなければなりませんでした。ですので、そのような現実を考える上で、ひとつの形にまとめるというよりも、「個別の物語を軽視しない」という姿勢が身についたようにも感じます。

