抱き合うこと、触れること
――「抱き合う」こと、また「触れる」ことについて、お伺いできればと思います。『イゴールの約束』や『ロルナの祈り』(2008)など、ダルデンヌ作品ではいつも「抱き合う」行為が印象的ですね。また「触れる」行為も印象的で、たとえば『午後8時の訪問者』(2016)では、医療従事者を主人公としていることもあり、患者のさまざまな身体に「触れる」行為が深い余韻を残します。そうした要素は、『そして彼女たちは』ではジェシカと母のハグや、ぺルラと姉のハグ、またジュリーの手を恋人が握るシーンなどに見てとれますが、「抱き合う」ことや、「触れる」ことへの意識をお聞かせいただけますか。
ジャン= ピエール 俳優の身振りを撮ること、さまざまな形で見せることは、映画だからこそできることです。せりふや視線の動きなども重要ですが、身振りをしっかりととらえることによって、目の前に「映画」があらわれるのだと思います。
それは私たちの基本的なテーゼではありますが、『そして彼女たちは』ではこれまでの作品以上に、身振りが大きな意味を持ったように思います。というのは、母子支援施設を訪れた際に、その身振りから、母親たちや職員たちの優しさがたしかに感じられたからですね。赤ちゃんを抱く動き、ミルクを飲ませる動き、入浴させる動き……。身振りの一つひとつに深い情愛が感じられ、だからこそ『そして彼女たちは』においては、そうした優しさを反映させるための身振りについて、さまざまなかたちで思考しました。
リュック なお、私たちの映画の作法としては、映画の細かな動作の大半は脚本の段階で決め、撮影前に長期間のリハーサルを行うことで、そうした動きを俳優の体になじませるようにしています。今回は5週間を、リハーサルの期間に置きました。
ただ、リハーサルの段階で、動きの詳細を書き変えることもあります。今回は、ともに赤ちゃんを抱っこしたアリアンヌとぺルラが、ぺルラの交際相手に電話するシーンがありますが、それは途中で詳細を変えました。ただ、どの動きも私たちがこだわりぬいたものではありますので、観客のみなさんにはぜひ、身振りの豊かさを味わっていただければと思います。
『そして彼女たちは』
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ/出演: バベット・ヴェルベーク、エルザ・ウーベン、ジャナイナ・アロワ・フォカン、リュシー・ラリュエル、サミア・イルミ/2025/ベルギー=フランス/104分/配給:ビターズ・エンド/©Les Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / Photo©Christine Plenus/公開中

