成人しても未婚だと「娼婦」と呼ばれる
息子たちは、大きくなると父のコンパウンド内に家屋を建てて、嫁を迎え、数年の結婚生活を送ったのちに自身のコンパウンドを持ち、独立します。ルオ社会では成人女性は結婚しているのが当たり前とされており、娘たちも成人を迎えるまでに結婚することが望ましいとされます。もし、成人したにもかかわらず未婚のままだと、「男の間を動き回る女」、すなわち「娼婦」と呼ばれ、軽蔑されるのです。
ルオ社会では男女の結婚が成立すると、夫側から妻側へと婚資としてウシ数頭が支払われます。離婚した際には、この婚資を返却しなければなりません。また、夫婦のいずれかが亡くなったとしても、この結婚関係は解消されることはありません。仮に夫を亡くした寡婦は、その後も亡くなった夫の妻として生き続けることが期待されています。ルオの言葉で寡婦とはチ・リエルと言いますが、「墓の妻」という意味があります。夫に先立たれた妻は、その後も夫の土地=コンパウンドに留まり続けます。
夫を亡くした女性に「代理夫」が必要なワケ
他方で、寡婦となった女性は、夫の代わりに家族の面倒を見てくれる別の男性と夫婦のような関係を持つようになります。このような関係をルオでは「テール関係」と呼び、寡婦の代理夫を「ジャテール」と呼びます。
ジャテールとなった男性は、寡婦やその亡き夫との間に生まれた子どもたちの労働や経済などさまざまな面での面倒を見なければなりません。また、寡婦との間に子どもが生まれれば、それは亡き夫の名を引き継ぐ子として育てられます。つまり、寡婦の子として、寡婦が婚姻後に所属してきた父系集団の成員に組み入れられるのです。
「特別な性交」について言えば、慣習に従わない誤った方法で行うと、当事者もしくは家族の病気や死など不幸がもたらされると信じられています。寡婦が慣習通りに儀礼や諸活動を行うには、決まったパートナーが必要になります。つまり、代理夫(ジャテール)に求められるのは、儀礼的セックスとしての「特別な性交」と、農作業や牛を使った犂すき作業、家屋やコンパウンドの建設などの男性の仕事の遂行なのです。逆に言えば、そのために寡婦はジャテールを必要とするのです。
