7歳になった少年は、年長の若者にフェラチオを施し、精液を飲み込む。これは性的逸脱ではなく、「男性性を獲得するための儀礼」だ。パプアニューギニアのサンビア社会では、この行為なしに男性は一人前の戦士になれないとされる。やがて彼らは結婚し、父親になると、異性愛者となる――。常識を揺さぶる性の人類学を『人類学者が教える性の授業』(ハヤカワ新書)より一部抜粋してお届けする。

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7歳頃から結婚するまで続く“特別な儀礼”

 人口2000人以上のサンビア社会は絶え間なく戦争を繰り返しており、これを通じて他の集団との関係が成立していて、そのような社会では、男性は戦士としての役割を期待されます。そこでは、戦士集団としての結束を最大限に高める父系社会・父方居住の暮らしが営まれています。このような父系社会では父から子へと義務や権利の継承がなされます。

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写真はイメージ ©アフロ

 サンビアにはこうした男子の紐帯を組織する男子秘密結社があり、そこで儀礼的同性愛に基づくイニシエーション儀礼が行われます。おおむね、少年が7歳から10 歳の間に始まり、結婚するまでの長期間続くとされています。

少年を「一人前の男性」にするために儀礼を行う

 サンビア社会では男子に対する長期にわたるイニシエーション儀礼が施されます。女性が完全なものとして生まれるのに対して、男性は生まれたままでは不完全なものであり、儀礼を受けることで初めて生殖能力を備えた一人前の男性になると信じられています。

 少女たちは女性器・産道・子宮、そして経血を溜める機能を持つティングと呼ばれる臓器を生まれながらに持っているとされます。思春期にはティングと子宮が充血し、やがて初潮を迎え、女性の妊娠能力と関連づけられます。女性は男性よりも健康的で、自ずから生まれる無尽蔵な性欲を持つとされますが、不完全に生まれる少年は、儀礼を通じて男性性を獲得することで、初めて生殖するための生物学的な能力を得るのだと考えられています。