小池 真理子『日暮れのあと』(文春文庫)

 山の静けさに包まれながら、軽井沢の木立の中にたたずむご自宅で、作家・小池真理子さんにとっておきの秘話を伺いました。(全5回の5回目)

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これからやりたいこと

――こういうことをこれから冒険してみたい、書きたい、など何かありましたら教えていただけますか?

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小池 特に新しいことをやろうという気はないですね。それは私が年をとってきたことと無関係ではないんだけれども、むしろこれまでのテーマを深めていきたいと思っています。新しい方向に行こうとするんじゃなくて、今あるものをどんどんどんどん掘り進んで深掘りしていきたい。浅かった井戸を上に戻れなくなるぐらい深く掘っちゃって、それでもいいじゃない、っていうぐらいのスタンスで書いていきたいです。

 時代とともに新しいものを積極的に取り入れて書くことが作家の使命だという考え方もあるし、それはその通りだと思うんだけれども、私はたぶん性格的にそっちの方には行かないで、深掘りしていくほうです。

――書きたいテーマはおありですか?

小池 うーん、いくつかはありますよ。やっぱり、作家である自分がこの世に生きていて感じて、考えて、言葉にしていくっていうことをやっていきたいと思うので。その都度その都度、微妙に自分が変化していくのを受け入れながら。

 なにか大上段に構えて思想的にこういうものを書かなきゃいけない、と特に考えているわけではなく、書いている途中でそうなる可能性はありますけども、私が生きた証として、死ぬまで私自身のちっちゃなコピーみたいなのをたくさん、文章化してばらまいていければいいかな、と思ってます。私自身が文章の一部、行間の一部に投影されていればいい。そうできれば幸せ。

――人生が凝縮した作品っていうことですね。

小池 その意味では、今回の小説集『日暮れのあと』はまさにそうでした。

小池真理子さんは、川上弘美さんとともに、明治大正昭和に生きた名だたる女性作家陣のエッセイ・アンソロジー、文春文庫創刊50周年記念特別事業『精選女性随筆集』(全12巻)シリーズで選者をつとめた。著者陣の中には、軽井沢で山の暮らしを送りながら執筆活動にいそしんだ野上彌生子がいる。(『精選女性随筆集 中里恒子 野上彌生子 小池真理子選』で作品をお読みいただけます)。文藝春秋にて。撮影:文藝春秋写真部