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「一生、自分は自分」という人は、そんな自分とどう付き合うのか?

この時代「人生のデザイン」なんて、できるのか

2018/08/30
note

 人間、しばらく生きていると「自分の人生、こんなものなのかな」と思う瞬間はあります。

 先日、Twitterでいきりちゃんというユーザーが「女性が育つ過程で自分の真実を知ってしまう瞬間」の絶望について書いていました。うわ、残酷だな、と。

https://twitter.com/ikirichan/status/1032583224088616961

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「受け入れがたい現実」と「バ美肉おじさん」

 この書き方をそのまま面白く読むならば半笑いになるだけでしょう。どこからどう見ても自分の理想とする自分像からはかけ離れた、現実の自分が鏡の中や映像として突き付けられる。イケてない自分という認識を強く持たされる。自分の容姿に自信を持ちすぎるとナルシスト扱いされますし、自信がなければFacebookが料理や風景の写真で一杯になるわけです。この辺の塩梅(あんばい)は実に難しい。実際、45歳になった自分の顔を鏡で見ていて「老けたなあ」とは思うわけですが、おっさんが加齢で嘆くのはともかく、少女が自分の容姿に絶望するというのは想像するだに辛い経験だろうなあ、受け入れがたい現実そのものだろうなあとも感じます。

©iStock.com

 俗に「バ美肉おじさん」と称されるバーチャルユーチューバーの世界は、そういう自分の容姿に対するコンプレックスを解消させてくれる、良い手段です。せめて仮想の世界においてなりたい自分になれる、美しく着飾った自分が言いたいことを言い、いろんな人にちやほやされる世界を構築したいというある種の理想郷がそこにあります。「バ美肉」とは、つまり「バーチャル美少女受け肉」であって、昔はYouTubeやTwitterに蔓延ったアニメアイコンのようでもあり、テキストサイトがかわいいイラストの女の子にヲタトークをさせてアクセスを稼いできた世界の延長線上にあるわけです。それが、みんな同じようなことを考えるものだから、一気にこの世界もレッドオーシャンになり、5,000人以上のバーチャルユーチューバーが美少女のガワ、中身はおっさんという残念なネットコンテンツの一部に成り下がり、しかしネットコンテンツで儲かるのはこの世界だからとベンチャーキャピタルやネット系事業会社が大枚を叩いて進出してくる事態となって、この理想郷もまた札束と札束で殴り合う戦争に巻き込まれていくことになるわけであります。だって、なりたい自分になれる、美少女が自分のイケてない容姿に成り代わって他人からの好意を引き出してくれるんですからね。そりゃみんな飛びつきますとも。