坂井 もしくは「あの時の困難を乗り越えてきた自分なら大丈夫」「これが自分の将来きっと役に立つはずだ」と学習して“苦境耐性”をつけるパターン。これは「自己成長パターン」としてOKです。逆に危ないのは、挫折経験をダメージと捉えるパターン。「令和ロマンと比べて自分はダメだと思った」というように、自分は他人よりも劣っている、自分は何をやってもダメだと解釈してしまうと、「人を信用してはいけない」という思考になるんですね。

ぐんぴぃ 確かに。

坂井 この解釈によって、他人に対して優しさを持って配慮ができる人になるか、あるいは「人間は裏切るから信用するな!」と考える人になるか分かれるということです。

ADVERTISEMENT

ぐんぴぃ へえ〜! 解釈で分かれちゃうんだ。

他者を軽視して自分の有能感を満たす「仮想的有能感」

坂井 そうなんです。そして、私が一番気になっている概念が「仮想的有能感」というもの。これはSNSの誹謗中傷について説明できる概念です。挫折経験をダメージと捉えた場合は、この仮想的有能感を持ちやすくなりますが、これは他者を軽視することによって自分の有能感を満たすということなんです。SNSで目立っている人や動画に出ている人に対して、「あいつは大したことない」と誹謗中傷する人がいるじゃないですか。あの現象が仮想的有能感なんですよ。

ぐんぴぃ 誹謗中傷する奴も普段は辛い気持ちを抱えているんだけど、ラランドのニシダを見て「あいつクズだよな」って優越感を持っていたり。「それに比べて僕は! 童貞ではあるけれども!  女に厳しいところは全くないわけで! その点ニシダよりは上かな! よし! 今日は寝るか」みたいなことかも。

坂井 それも仮想的有能感の例ですね。自分を上げるよりも、人を下げる方が手っ取り早い。これはすごく良くないという話ですね。

『理不尽仕事論 「クソが!!」と思った時に読む本』(文藝春秋)

ぐんぴぃ 嫉妬でもあるんですかね。嫉妬は自分の地位を下げる行為だと言いますけど。

坂井 まさに嫉妬です。人は自分が欲しいと思っているものを持っている人を攻撃するからなんでしょうね。名誉が欲しい人ほど名誉ある人を攻撃するし、人気が欲しい人ほど人気者を攻撃する。つまり、攻撃している相手こそ自分が執着しているものを映し出しているわけです。そして話を戻すと、やはり挫折経験を味わった方がいいという話ではないんですよ。「挫折経験も糧になってるからいいじゃん」という解釈のトレーニングをしてあげないと、「あいつ裏切るじゃねえかよ」という嫉妬と攻撃の思考になってしまうわけですよね。

ぐんぴぃ おもしろ!! 自分の受け方次第なんですね。挫折という大きな岩を、どう加工するか学ばなきゃいけないんだ。

理不尽仕事論 「クソが!!」と思った時に読む本

坂井 風太 ,ぐんぴぃ

文藝春秋

2026年4月10日 発売

次の記事に続く 父親に“タコ殴り”にされ、骨を折ったら「自転車で転んだと言いなさい」と…『バキ童』ぐんぴぃが明かす、つらい記憶の中で“唯一救われた瞬間”とは