新宿二丁目通い、前歯9本抜き…徹底した役づくり
確かな演技で物語を牽引した北村は、両親の影響で幼少期からの映画好き。タイロン・パワー主演の『海の征服者』を観て海賊への憧れと、世界中を回りたいという思いから商船高専に進学するも途中で自主退学し、もう一つの夢だった俳優の道を志した。19歳で上京後、あらゆるオーディションを受けるが、箸にも棒にもかからず、海外を放浪していた時期も。
そんな北村の転機となったのが、1997年公開の映画『鬼火』への出演だ。この作品でゲイバーのママを演じるにあたって、新宿二丁目に通い詰めた北村は説得力溢れる芝居でインパクトを残した。その実力が高く評価され、以降は『新・悲しきヒットマン2』『岸和田少年愚連隊 血煙り純情篇』『蘇える金狼』といったハードボイルド作品を中心に順調に出演作を増やしていく。
1998年には、『JOKER 厄病神』でチンピラを演じることになり、自らのイメージを役に落とし込むべく前歯を9本抜き、4本削るという暴挙に出た。その是非は一旦置いておくにしても、誰にでも出来ることではないし、役づくりへの情熱は半端ではない。
妥協のなさが、視聴者の胸を打つ
筆者は以前、北村が主演を務めたTVerオリジナルのミニドラマ『おっちゃんキッチン』の撮影現場を取材したことがある。その際、大衆食堂の店主を演じる上で自然な動作や振る舞いを模索し、スタッフと密なコミュニケーションを重ねる北村の姿が印象に残った。
『風、薫る』で信右衛門を演じるにあたってもコレラについて徹底的に調べ上げ、撮影の前から数か月かけて体重を落としたことをインタビューで語っている(※1)。また“言葉”が重要な役割を持つキャラクターのため、セリフの順番や方言の響きなど、細かな部分についても演出陣と現場で積極的に意見を交わしたそうだ。その妥協のなさが、視聴者の胸を打つ芝居に繋がっているのだろう。
同じ父親役でも、2019年放送の朝ドラ『スカーレット』で演じたヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)の父・常治はダメ親父だった。酒飲みのお人好しで、すぐ人を助けるため、一向に借金が減らない。そのくせ一丁前に亭主関白な常治は最初こそ視聴者から批判を集めていたが、ぶっきらぼうにも娘たちへの愛情がダダ漏れな、不器用で憎めないそのキャラクターが北村の人情味溢れる芝居とともに少しずつ受け入れられていった。


