実際には、会見で「魔性」という単語を口にしたレポーターはいない。さすがに新婚の妻に向かって使う表現ではない、という線引きがあったのだろう。

 それでもレポーターたちは「魔性」という単語を「恋多き女優」「モテ女優」というオブラートに包んで質問を繰り返した。山里さんは、メディア側のその意識を感じ取り、きっぱりと否定しようとした。

「みなさんの目の前にいる蒼井さんと違う蒼井さんを僕は見せていただいていると思うんで」
「楽しい時には笑って、おいしいものを食べた時はコロコロ笑って、泣きたい時はすごく泣く」

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 言葉に力を込め、そう懸命に説明した。

©時事通信社

蒼井優の目に涙が浮かんだ理由は…

 それまでは山里さんのボケににこやかな笑顔を見せていた蒼井さんが、この時はすっと視線を外してうつむいた。ギュっと引き締められた唇も巻き込まれていく。山里さんが自分を守ろうとしていることを察知して、居心地の悪さを感じたのだろう。

「みんなが思い描くのって、ちょっと違うでしょ。魔性って言葉を使ってるけど、僕はそんな人間じゃないっていうのを一緒にいて、ずっと見てたんで。だから魔性から発生する心配は一切ございません」  

 山里さんはそう言い切ると、ボタンを外していたジャケットの前裾を軽く触った。言いたいことを言い切ったという安堵感とともに、会場からどのような反応が出るのか、心の内の不安が現れたようだった。

 繰り返すが、会見の中で「魔性」という言葉は登場していない。しかし山里さんは自ら「魔性って言葉」と言及し、それを否定した。事前に備えていた話題だった可能性は高いだろう。

 それを聞いている蒼井さんは、うつむいたまま何度も唇を噛んでいた。大きく瞬きした目には涙が滲んでいる。「魔性」という言葉に彼女がそれまで苦しんできたことがわかる。

「魔性から発生する心配は一切ございません」という山里さんの言葉に、上半身を折り曲げるように深く頷く顔は真剣そのもの。

©文藝春秋

 山里さんを選んだ理由を聞かれた時、蒼井さんはこうも言っていた。

「それでもいいと言ってくれてありがたい」

 “美女と野獣”とまで言われた結婚報告会見だが、救われたのは美女の方に見えた。

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