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神戸は「バルサ化」でどうなる?

 もちろん本業のサッカーにおいてもイニエスタ効果は絶大です。

 今シーズン、楽天ヴィッセル神戸株式会社の代表取締役会長の三木谷氏が4年間、総額280億円でFCバルセロナとスポンサー契約を結んだことから神戸も「バルサ化」がチームの指針となりました。世界のトップクラブのサッカーを実現するという壮大な計画ですが、シーズン開幕前、吉田孝行監督は「そんな簡単なもんじゃない。言葉だけじゃ本物にはならないし、勝てないと意味がない。今年は、まずベース作りから始めたい」と非常に慎重でした。

 しかし、思いがけずイニエスタという「バルサの血」の加入で神戸のバルサ化が一気に進行しました。

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©JMPA

イニエスタが加入してから7名の選手を放出

 まず、選手の入れ替えです。

 イニエスタの加入以降、新たに獲得した選手は、大崎玲央、古橋亨梧、ヤセル、長沢駿の4名。逆に放出した選手は元日本代表のハーフナー・マイク、渡邉千真、神戸の生え抜きの小川慶治朗ら主力選手を含め7名もいました。

「イニエスタが来てからは、よりバルサを意識し、今の自分たちのスタイルに合う選手を補強しているし、今後はさらにそうなっていく。そうなると昨年までのサッカーとかなり違ってくるので、いい選手なんだけどスタイルに合わない選手が出てきた。その影響で選手がだいぶ入れ替わってきている」

 吉田監督がそう語るように、新加入の古橋は活き活きとしたプレーを見せ、イニエスタとの絡みも徐々に良くなっています。「学ぶことばかりです」と本人は謙虚ですが、吉田監督は「若手の伸びがすごい。着実にうまくなっている」とイニエスタの影響力の大きさに驚きつつ、彼自身が教本となり、見せる指導に今後も期待しています。

彼がいない時はどうする?

 ただ、気がかりな点もあります。

 例えば湘南戦のように相手のハイプレスにハマり、ポゼッション率を下げてしまうとイニエスタの良さが出ないですし、チームとしても機能しなくなります。

 イニエスタに誰も何も言えなくなり、依存してしまうのではないかという危惧もあります。彼を王様にしてしまうと選手は思考を止め、「ボールを預ければいい」と考えてしまいがちです。そうなると選手の成長は停滞し、イニエスタ不在の時はチームが機能しなくなってしまいます。吉田監督は、「イニエスタは周囲を活かすし、人をずっと動かしているタイプ、王様のようなプレーをしたり、みんなが頼り過ぎたりするのはない」と言います。しかし、イニエスタがスタメン出場した柏戦以降、湘南戦まで3勝1分けですが、スペインへの一時帰国で欠場した2試合は1敗1分けで勝てていません。