公的保険でカバーされないのなら自己防衛するしかないと加入する人が増えることが期待できるからです。
ここにも経済力の差が命と健康に直接ひびいてくることになるのです。
今回の健康保険法改正案には、こうした国家の根幹とこの国に生きるすべての人の命と健康に直接影響をおよぼす重大な条文が隠されていました。
私もすっかり騙されてしまっていましたが、「OTC類似薬」などまったく本丸ではない枝葉末節のことだったのです。
もし「OTC類似薬」の薬剤費についての改正というのであれば、第六十三条第二項に追加する条文は、
六 要指導医薬品……又は一般用医薬品……との代替性が特に高い薬剤の支給であって、公平かつ効率的な保険給付を行うため、当該薬剤の購入に要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとして厚生労働大臣が定めるもの(以下「一部保険外薬剤」という。)
とすればよいだけです。しかし、じっさい法案では薬剤費に限定しなかったのです。
つまり改正の本丸は「混合診療の全面解禁」の法的根拠の確立だったということです。
このまま改正を進めてはいけない
健康保険法改正案は是か非か、この議論をおこなうためには、混合診療の問題から熟議しないことにははじまりません。
それにはこの法案にこっそり差し込まれた文言について、すべてのメディアが大きくとりあげ、混合診療の意味や是非についての国民的議論をまずはじめることが必要です。
それにはあまりにも時間がなさすぎです。高市政権には、今国会での法案成立は、あきらめていただくしかないでしょう。
医師
1968年生まれ。医師。東京科学大学医学部臨床教授。在宅医療を中心に、多くの患者の診療、看取りをおこないつつ、医学部生・研修医の臨床教育指導にも従事、後進の育成も手掛けている。医療者ならではの視点で、時事問題、政治問題についても積極的に発信。新聞・週刊誌にも多数のコメントを提供している。著書に『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』『病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ』(いずれも角川新書)など。
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