日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。
新川次官続投のけじめ
今夏の幹部人事を前に、財務省では在任1年目の新川浩嗣次官(昭和62年、旧大蔵省入省)と、宇波弘貴主計局長(平成元年、同)が揃って続投するとの見方が強まっている。背景にあるのは、来年度予算案までに解を出す必要がある“難題”の存在だ。
石破茂政権にとって通常国会における最大の関門だった2025年度予算は、現憲法下で前例のない参院での修正を経てなんとか成立した。例年ならば財務省にはしばらくのんびりムードが漂うが、今年は様相が異なる。「103万円の壁」見直しによる所得税の減収に加え、日本維新の会による高校授業料の無償化費用として1000億円余りの歳出を追加計上。来年度以降も見据えれば、無償化の拡大に向け、毎年6000億円程度を見繕う必要がある。財政上の均衡を図るなら、「年収の壁」見直しの減収分に無償化費用を合わせると、単純計算で1兆円以上の財源確保が求められるのだ。
そうした中で、維新が財源の捻出策として声高に叫ぶのが、「OTC類似薬」である。市販薬と効果が似ている風邪薬や湿布を保険適用から除外することで医療費を削減する算段だが、日本医師会は「重大な危険性が伴う」として大反対。実現は容易ではない。
こうした難局を前に、新川、宇波両氏の留任が囁かれているのだ。2人の歩んだキャリアは共通点が多く、新川氏は安倍晋三政権、宇波氏は岸田文雄政権でそれぞれ首相秘書官に就任。官房長を経て主計局長に就いた。宇波氏が「次の次官」であることは、ほぼ衆目の一致するところである。
両氏は、年金や医療制度を受け持つ厚生労働第一担当の主計官も務めた。この担当は一般会計歳出の3割程度を占める社会保障関連予算を預かるため、厚労省や日本医師会からも一目置かれる立場。さらに言えば宇波氏は、数年前から維新の前原誠司共同代表とも定期的に懇談の場を設けてパイプを築いている。社会保障に明るい2人で「無償化とOTCの“けじめ”を付けてもらわねば」(省幹部)というわけだ。
《この続きでは、OTC類似薬の保険適用除外について、財務省と自民党の本音を分析しています》
※本記事の全文(約5500文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年6月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。
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古賀信行経営委員会委員長は周囲にこんな本音を漏らしていた。「ハッキリ言って、経営委員会では、理事の“品質保証”は…

■連載「霞が関コンフィデンシャル」
【2024年】
1月号 アラビスト不在の外務省、空中分解する官邸官僚、診療報酬改定の黒幕、静寂に包まれる日銀本店
2月号 国会審議に赤信号、「三羽ガラス」の行方、未だ残る安倍銃撃の余波、女性初の海将が誕生
3月号 オール霞が関で復興へ、対トランプのキーマン、痛み分けの診療報酬改定、「政治部独裁」のNHK
4月号 財政健全化への新目標、人口減に向け本格始動、新体制の宮内庁、愚痴る首相側近
5月号 「ミスター円」の将来、“女傑抜擢説”の裏側、「復活組」の活躍、異能のアラビスト
6月号 令和のモーレツ官僚、脱原発の知恵袋、準キャリアのエース、サイバー新組織の陣容
7月号 官僚たちの選挙戦、「改革派」の真価、処分を克服できるか、新御用掛の安定感
8月号 政権を去る「恐竜」、波紋を呼んだ中企庁長官、新・プリンスの実力、オールジャパンの真価
9月号 処分を逃れた「巨悪」、財務次官の系譜、女性検事総長への嘆息、長官レースの号砲
10月号 新秘書官の本命候補、「脱・警察」となるか、「イトウ違い」の裏側、旧自治省の“復権”
11月号 新総理との距離感、原発再稼働の勝負所、少子化対策のキーマン、高専出身次官の力量
12月号 不安漂う首相秘書官、首相肝いりの官房副長官、間合いを詰めた金融庁、相次ぐ県警不祥事
【2025年】
1月号 「壁」を巡る同期の攻防、「岸田議連」の火種、元首相秘書官に“赤紙”、1年延期の新次官
2月号 野党対策の黒子たち、官邸に漂う閉塞感、総務官邸官僚の実力、次期警察人事の行方
3月号 経産省が込める“実弾”、新次官と首相の距離、財務相を支える女性たち、インサイダーの“余波”
4月号 財務省の“切り札”、森山印の次官レース、日米会談の余波、燃え盛る厚労省
5月号 試される牛若丸、パワハラ騒動の余波、多士済々の5年組、プロパー会長の行方
6月号 今回はこちら
出典元

【文藝春秋 目次】緊急特集 黒船トランプ迎撃作戦 トランプ危機をチャンスに変えろ/スペシャル企画 東京はすごいぞ/梯久美子 やなせ先生と「あんぱん」と私
2025年6月号
2025年5月10日 発売
1300円(税込)