しれっと埋め込まれた“不可解な一文”
しかし、それはあまりにも危機感を欠いた認識でした。
辰巳議員は質疑で、法案を読めば、今回の改正で創設される「一部保険外療養」の対象にはOTC類似薬の薬剤費にかぎらず、そのほかの薬の薬剤費、さらに診察・治療・検査も含まれるのではないかと質したのです。
驚いた私はすぐさま衆議院のホームページから法案を検索、そこではじめて法文を読み青ざめました。
いわゆる「霞が関文学」で書かれた法文は、さらっと読むだけではそのなかに埋め込まれた「真意」を読み解くことがなかなか困難です。
私は過去に数年間、ある国会議員の質問主意書の作成に関与していたことがあるので、法律の条文や政府からの答弁書の読み解きには比較的慣れているほうではありますが、それでも今回の法文は難解でした。
しかしその特殊な文章のなかに、あきらかに不自然な語句が埋め込まれていることに気づいたのです。
第六十三条第二項に次の一号を加える。
六 要指導医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第四条第五項第三号に規定する要指導医薬品をいう。)又は一般用医薬品(同項第四号に規定する一般用医薬品をいう。)との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする療養として厚生労働大臣が定めるもの(以下「一部保険外療養」という。)
医療制度を支える大原則
健康保険法の第六十三条とは、療養の給付について規定している条文です。
わが国の健康保険制度では、被保険者の疾病や負傷にかかる療養(診察・薬剤・処置・手術・看護など)の給付は、金銭ではなく、医療サービスそのものを提供する「現物給付」が原則となっています。
この原則のもとでは、保険診療と保険のきかない自費診療を併用すると、本来なら保険がきくはずの部分も含めて全額自己負担(10割負担)というペナルティが課されます。これがいわゆる「混合診療の禁止」といわれるものです。