「この役は誰にも渡したくない」
時代物の映画でも、『蝉しぐれ』(2005年)で幼馴染みの武士に恋心をひそかに抱き続けるヒロインを演じたかと思えば、『さくらん』(2007年)では嫉妬に狂う花魁と、まるで異なる役どころを演じた。同時期には、映画『ドリーム・クルーズ』(2007年)でハリウッドデビューも果たし、単発ドラマ『テレサ・テン物語 私の家は山の向こう』(テレビ朝日系、2007年)では、「アジアの歌姫」と呼ばれた台湾出身の歌手テレサ・テンの役に起用される。
テレサの役には何人かの候補が挙がったが、時代に翻弄された実在の人物という役の重さもあり交渉段階で辞退があいついだ末、木村に声がかかり、「この役は誰にも渡したくない」と思ったという。このドラマの原作者でジャーナリストの有田芳生(現・衆院議員)は、《実際のテレサと面識があるドラマの原作者として、どんな女優が演じるかはいちばんの関心事でもあった。わたしにとっての基準はただひとつ――身体全体からそこはかとなく漂ってくる上品さ――であった。木村佳乃に決まったと聞いたとき、何の疑念も浮かぶことなく「よかった」と思った》と、彼女を取材したルポに記している(『AERA』2007年6月4日号)。
実際、役に決まってからの木村は、テレサとは顔形も違い、物真似になってもいけないと思い、歌い方も含めて「雰囲気を出す」ことを目指した。そのために映像資料を集めるだけ集め、CDも繰り返し聴くばかりか、テレサのマイクの持ち方も身体で覚え、化粧のファンデーションまで変えて、それまでにないほど役作りを徹底した。おかげで演じるうち、テレサの心情に触れ、自然と涙を流していたという。
剃髪姿も話題に、当たり役となった『相棒』
これら作品と前後して、28歳だった2004年からは、人気ドラマシリーズ『相棒』(テレビ朝日系)に政治家の片山雛子の役で出演を始め、主人公の杉下右京(水谷豊)が所属する警視庁「特命係」とかかわりながら、総理大臣を目指してステップを踏んでいくさまを演じ、当たり役となった。雛子は一旦議員を辞職して表舞台から姿を消したが、2018年のシリーズ300回記念スペシャルで2年ぶりに登場するにあたり、何と出家するという展開で、木村は特殊メイクとはいえ剃髪姿を披露して話題を呼ぶ。
雛子を演じ続けるあいだ、木村は私生活では同じく俳優の東山紀之と2010年に結婚し、2011年に長女、2013年に次女を儲けている。子育てをするなかで、仕事でもNHKの朝ドラ『ひよっこ』(2017年)をはじめ、声優を務めたアニメ映画『君たちはどう生きるか』(2023年)やドラマ『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系、2024年)など母親役を演じる機会も増えていった。(つづく)
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