子どもたちのさまざまな質問に、各分野の専門家が「先生」として回答する「NHK子ども科学電話相談」。「昆虫」「天文・宇宙」「心と体」「鳥」それぞれの分野から、4人の先生たちの子ども時代についてインタビューしました。
「銀河の中の地球の場所はすぐにわかるのですが、地球上の場所に関してはかなりの方向音痴
取材場所をメールでお送りしたところ、こんな返信をくださったのは「天文・宇宙」の先生を務めた、コスモプラネタリウム渋谷のチーフ解説員・永田美絵先生。一体どんな人?
―― 先生の子ども時代について教えてください。
永田 子どもの頃は、自分でいろいろな遊びを“発明”するのが好きでした。
たとえば、大きな鏡を天井に向けて持って、家中を歩き回る遊び。鏡に照明が映ったり、天井の凸凹が映ったりしたら、それを障害物に見立てて、またいだりよけたりしていました。
あとは、「暗闇かくれんぼ」。カーテンを締め切って部屋を真っ暗にしてかくれんぼをする。これが意外と難しいんですよ。普通のかくれんぼって、見えないところに隠れるじゃないですか。暗い部屋の場合、壁にぴったりくっついて立っているだけでも意外と見つからなかったりする。
ファインダーからズレる月を見て「すごいぞ、これは」
―― 子どもの頃から、宇宙にも興味があったんですか?
永田 星も、小さい頃から好きでしたよ。生まれは東京都で、星がきれいに見える場所ではないんですけれども、父が川崎市青少年科学館(現・かわさき宙と緑の科学館)のプラネタリウムに連れていってくれたんです。
本格的に好きになったのは、小学生のときに望遠鏡で月食を見たことがきっかけです。望遠鏡で月食を見ていると、だんだんと望遠鏡の視野から月が動いちゃうんですよね。要は、地球が回転をしているので、ある一点に望遠鏡を向けていると、ファインダーから月がズレていっちゃう。地球が回転しているというのは知識としては知ってはいたんですが、初めてそれを実感して「すごいぞ、これは」と。
ボイジャー号が撮った土星は「一生を変える美しさだった」
―― この道に進むきっかけは何だったんですか?
永田 中学生にあがる頃、NASAが打ち上げたボイジャー号という探査機が木星や土星をめぐっていて、テレビでその様子がバンバンと入ってきたんです。
特に衝撃を受けたのが土星の様子。それまで、地球にある天文台からしか土星は見ることができなかったんですが、ボイジャー号が初めて土星の近くまで行って、環の様子や衛星をババーンと映したんです。それがある意味、一生を変えるぐらいの美しさだった。
学生の頃、透明の下敷きにアイドル歌手の写真を入れるのが流行っていたんですけど、私は下敷きに土星の写真を入れていて(笑)。
―― まさに、先生にとって「土星はアイドル」だったのですね。
永田 そうなんですよ。周りの友人たちは、そんな私の「土星愛」をすごく暖かく応援してくれる人たちばかりでした。
私が「土星に行きたいよ~」と言えば、建築に興味がある友人は「じゃあ発射台作るか」と言ってくれたり、理系に進む友人は「一緒に宇宙開発するか」と言ってくれたり。当時通っていた高校の校長先生が天文台を持っている施設に電話をかけてくれて、「うちの生徒が大好きなので、見せてあげられる日程はありますか?」と聞いてくださったこともあります。
本当に「宇宙」一筋でやってきたので、もしこの道が駄目だったら、私、どうなっちゃってたのかな、と思います(笑)。