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今の地球の環境は、46億年かけてできている

―― 宇宙に関する仕事ができて「よかった」と感じることを教えてください。

永田 宇宙自体の魅力もさることながら、地球の素晴らしさを感じることができることでしょうか。こんなにたくさん星があるんですけれども、その中で生き物が住んでいる星って、本当に地球だけなんですよね。

 

―― 今では「火星移住」を実現しようとする人もいますが……。

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永田 みなさん、簡単に「他の星に移住」などとおっしゃるんですけど、地球を守ったほうが全然たやすいんです。生き物が暮らす地球の環境って、46億年もかけてできているので。そう考えると、この地球を大切にしていこう、と伝えていかなければと思います。

 それに、私は勝手に「天文学は世界を救う」と思っていて。地球全体を俯瞰して見るような、大きい視点で物事を見ると、国だとか身分だとか、関係なくなるんじゃないかと思うんです。変な話、戦争とかも、「なんでこの地球の領土を奪い合ったりする必要があるの?」って思えるじゃないですか。

 悩みを抱えた10代の子が、私が働いているプラネタリウムに来て「広大な宇宙を見ていたら、なんて自分の悩みはちっぽけなんだって、気がラクになった」と言ってくれたこともあります。そういう気持ちになれるのが、宇宙の魅力だと思います。

マイブームは「おいしいパン」

―― 「NHK夏休み子ども科学電話相談」で「からあげ座を作りたい」という相談に関連して、先生が「私は食パン座を作っている」とおっしゃっていたのが印象的でした。

永田 パンが大好きなんです。ちょっとご覧になっていただくと、そことか(カバンについている、クロワッサンのマスコットを指差す)。

 

―― おお!

永田 もともとは、プラネタリウムの仕事が忙しい時期に「早く食事を済ませなければ」ということでパンを食べるようになったんですけど、そのうちすっかりハマってしまって。今はバルミューダトースターを家と職場に1個ずつ置いてます。

 職場にお客様がいらっしゃるときは、必ずパンを持っていって、お客様と一緒にパンを食べながらミーティングしたり。なので、星も大好きなんですが、最近ちょっと「どうしよう」ってぐらい、パンも好きですね(笑)。特に「ブールアンジュ」のクロワッサンが大好きです。

ベテルギウスには、やっぱり爆発してほしい

―― 「NHK夏休み子ども科学電話相談」で先生が恒星のベテルギウスについて、「爆発しないかな~」とおっしゃっていたことがSNSで話題になっていました。先生は、ベテルギウスに爆発してほしいんですか。

永田 してほしいです(笑)。もちろん、爆発して、地球が大変なことになっちゃうんだったらしてほしくないですよ。でも、ベテルギウスまではかなりの距離があって、爆発しても地球に何ら影響がないというのも分かっています。だったら、見たいじゃないですか。

―― 爆発すると、どうなっちゃうんですか?

永田 人類史上で超新星爆発はこれまで何回かあって、そのときの文献によれば、昼間でも見えるぐらい明るくなるんです。1カ月ぐらいは明るく輝いて、徐々に暗くなってくると。

 

 爆発したら、すっごいみんな空を見上げると思うんですよね。ついこの間、月食があったときに渋谷の街を歩いていたら、皆さん歩道橋とかの上からスマホで撮っていて。それを見た方も、やっぱり空を見上げて、雑踏の中で撮っていたりして。みんなが一緒になって、1つの宇宙を見ている、それって平和で素敵じゃないですか。

――美しいでしょうね。

永田 そうでしょうね。強いて言えば、ベテルギウスは冬のオリオン座の中の星なので、夏の間はちょっとよく見えないんです。なので、爆発してくれるなら、オリオン座が上ってくる夏の終わりから冬のあいだにしてほしいですね。

写真=深野未季/文藝春秋