「不倫しそうもない清潔なイメージの人」から「失楽園」での転身

 人妻になった黒木が37歳で再び大胆な濡れ場に挑戦したのが映画『失楽園』だ。原作は『化身』と同じ渡辺淳一。テレビドラマでは川島なお美が主演して高視聴率を獲得したが、黒木が出演した映画はテレビを遥かに超える過激なラブシーンの連続で、やはりR-15指定となり社会現象にまでなった。

「失楽園」は社会現象にまでなった

 黒木をキャスティングした理由について監督の森田芳光は「不倫しそうもない清潔なイメージの人」と語っている。

 黒木自身は当初「自分のようなスレンダーなボディでいいのか?」と悩んだというが、脚本に魅了され出演を決意。撮影で強烈なラブシーンを演じた後は「家に戻ると『私、何やってるんだろう?』と思った」と素直な心情を明かしている。

ADVERTISEMENT

 実際に結婚し、37歳を迎えた黒木が不倫に溺れ、激しい性愛に身を焦がす熱演は主婦層の共感を得ることに成功し、演技は「気品あるエロス」と高評価。年齢指定があるにもかかわらず興行収入は40億円を超え、1997年の5位に入る大ヒットを記録した。

 とにかく本編映像の70%以上がラブシーンという映画なので見せ場だらけだが、 中でも印象的なのが、マンションでの場面。なまめかしく舌が絡み、黒木側が役所の乳首を舐めたり、「私がしてあげる」とリードする場面もあるなど、女性の主体性が強調されている。

 腰の揺れや肌の質感に至るまできめ細かく撮影され、過激さだけが突出せぬよう心がけられている印象だ。クライマックスは雪深い温泉旅館で、ふたりは結合したまま服毒心中。まさに“絶頂のまま逝く”という究極の愛を象徴し、物議をかもした。

「失楽園」の1年後には、38歳で長女を出産したことも世間をざわつかせた。しかもプライベートではかなりの「良妻賢母」として知られている。

 仕事復帰は産後1カ月半と早かったが、撮影所のトイレで母乳を搾るなど多忙な日々を送り、その日々を後にこう振り返っている。

「結論から言うと仕事とプライベートは両立はできません。はっきり言ってしまって身も蓋もないけれど、できないです。では、どうするかというと、とにかく完璧主義にならないこと。そして優先順位を決めること。自分ができることを、できるだけのパワーでやる。無理をしないことを心がけていくと、うまく物事が回っていきました」

60歳を超えているとはとても思えないスタイルと美貌 本人インスタグラムより

 大人になった娘とは美容トークで盛り上がりつつも常に「私はあなたの母親です」という距離感は保っているという。

 黒木はキャリアの中で不倫役を含め多くのヌードや濡れ場を経験してきながら、「理想の妻」や「理想の母親」に何度も選ばれている。それも、彼女の地に足のついたスタンスゆえなのかもしれない。

次のページ 写真ページはこちら