噓の情報を投稿してまでなぜ
投稿から4日経った9月28日、投稿は消え、投稿者のアカウントも凍結されていた。しかし、その時点での再生回数は1000万回を超えていた。
「なぜ噓の情報まで投稿してクルド人を悪く思わせたいのか。もう地元の人だけでなく、日本中の人がクルド人は悪いことをしていると思い込んでしまっています」
セレンはそれまではクルド人であることを恥じたことはなかった。一家はトルコ南東のガジアンテップ出身。少数民族であるクルド人は歴史的にトルコ政府に弾圧され、公的な場所でクルド語を話すことすら禁じられてきた。
父のダワンは抵抗運動に加わり、トルコ政府に勾留されたり、拷問を受けたりしたとして日本に退避。難民申請したが、入管庁から不認定とされ、在留資格がないまま申請を繰り返している。
別に難民申請をしたセレンら残りの家族は、当初は在留資格を与えられていたが、2022年8月に不認定が確定し在留資格を失った。
一家全員が健康保険もないため病気になっても医療機関に自由に行けず、県外にも自由に出られない「仮放免」の状態だった。
しかし、苦しい生活の中でもセレンはクルドの誇りを持って生きてきた。特に毎年3月に開かれるクルドの祭り、ネウロズを楽しみにしている。
「クルド人」と名乗れなくなった少年
「クルドの伝統的な衣装を着て、みんなと手をつないで踊っていると、最高の気分になります」
しかし、いまは「クルド人といったら悪い印象を持たれると思う。いくら相手がいい人でも『クルド人です』と名乗ったら、悪い人だと思われるのが怖い」とおびえる。
2025年の春、セレンは川口市内の県立高校に合格した。学校でクルド人は自分一人だけだった。
「どこの国の人なの?」。入学式で初めて会った日本人の級友が聞いてきた。
「ク……」と言いかけて口ごもり、次の瞬間、答えていた。
「トルコ人だよ」
