「車を弄って何になる?」と考えるまでもなく、まるで本能のように車を改造する者たちがいる。商用バンを舞台に家族の絆を育む男性、母親の軽自動車を20年かけて500万円超の一台に仕上げた船乗り、山奥で音を調整するオーディオマニア、そして「湘南のLS乗りといえば俺」を目指す25歳。彼らはなぜ、車を弄り続けるのか。
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北米版のレクサスLS430に乗る「伝説のLSせとみん」さんは25歳。あえて左ハンドル仕様を選んだのは「同じ形でも普通のセルシオだと周りと被っちゃうから」。
初見でセルシオと間違えた相手に運転席を見せる瞬間を「ちょっとした快感」と表現し、最終的に「湘南のLS乗りといえば俺」と言われることを目標に掲げる。
給料のほとんどが車に消えると笑いながら、外装はシンプルに、内装にはヴィトン柄を入れていく計画を語った。
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「もうこんなの乗れない!」母の一言がきっかけで…
初代タントをカスタムする「まさ」さんの場合、きっかけはあっけないほど偶然だった。
20年ほど前、母親が新車で買ってきたタントと、自分の免許取得がたまたま重なった。「もうちょっとカッコよくしたいな」と興味本位でこっそり車高調を入れ、さらにエアロを組んだところで母親から「もうこんなの乗れない!」と宣告され、そのまま譲り受ける形になったという。
以来20年、カスタム総額は500万〜600万円に達した。「普通車に乗ればいいのに」という周囲の声には、「そもそも乗用車に興味がないところからスタートして、成り行きでここまで弄ってきたので、もうわざわざ乗り替える気にはならない」と答える。
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宮城でプロボックスをカスタムする加藤さんは、もとはVIP系セダンを乗り継いできたが、結婚・子育てを経て「家族でも使いやすい車」へと舵を切り、最終的に商用バンへ行き着いた。
妻の勤め先がカスタムショップで、夫婦ともに車関係の仕事に就いているため、「弄るときには妻に伝えはするが、返事は待たずに手をつけてしまう」という自由度の高い環境だ。かつてはサーキット走行も試みたが「まったく上達しなかった」とあっさり認め、今はドレスアップ一本に絞っている。
18歳の息子がようやく車に興味を持ちはじめたことを「ちゃんと自分たちの血を引いていたんだな」と安堵する姿に、車好き一家の温かみが滲む。
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ムーヴにオーディオを積む「KOH」さんは、スポーツ系からドレスアップ、そしてオーディオへと流れ着いた。
「単純にいい音で聞きたいというよりは、イベントで上を目指すにはオーディオが必須だから」という理由が正直なところで、調整のために周りに民家のない山奥まで赴くという徹底ぶりだ。
「世間の感覚からはかけ離れた趣味だとは思います。ただ、オーディオは一度手を出すと本当にキリがない」と苦笑しながら、仲間と「あぁでもない、こうでもない」と作業する時間を何より楽しむ。
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カスタムの動機も車種も生活環境もまるで異なる四者だが、「オリジナル」を追い求める熱量だけは、不思議なほど共鳴している。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。







