「車を弄って何になる?」と考えるまでもなく、まるで本能のように車を改造する者たちがいる。商用バンを舞台に家族の絆を育む男性、母親の軽自動車を20年かけて500万円超の一台に仕上げた船乗り、山奥で音を調整するオーディオマニア、そして「湘南のLS乗りといえば俺」を目指す25歳。彼らはなぜ、車を弄り続けるのか。

◆◆◆

 北米版のレクサスLS430に乗る「伝説のLSせとみん」さんは25歳。あえて左ハンドル仕様を選んだのは「同じ形でも普通のセルシオだと周りと被っちゃうから」。

ADVERTISEMENT

普段の足もこのLS。左ハンドルは案外運転しやすいのだとか

 初見でセルシオと間違えた相手に運転席を見せる瞬間を「ちょっとした快感」と表現し、最終的に「湘南のLS乗りといえば俺」と言われることを目標に掲げる。

純正の優雅なデザインを活かしたまま、ローダウンとツライチで差別化

 給料のほとんどが車に消えると笑いながら、外装はシンプルに、内装にはヴィトン柄を入れていく計画を語った。

◆◆◆

「もうこんなの乗れない!」母の一言がきっかけで…

 初代タントをカスタムする「まさ」さんの場合、きっかけはあっけないほど偶然だった。

貨物船の機関士として働く「まさ」さん。1年の半分は海の上にいるという

 20年ほど前、母親が新車で買ってきたタントと、自分の免許取得がたまたま重なった。「もうちょっとカッコよくしたいな」と興味本位でこっそり車高調を入れ、さらにエアロを組んだところで母親から「もうこんなの乗れない!」と宣告され、そのまま譲り受ける形になったという。

純正とは似ても似つかぬ相貌となったタント

 以来20年、カスタム総額は500万〜600万円に達した。「普通車に乗ればいいのに」という周囲の声には、「そもそも乗用車に興味がないところからスタートして、成り行きでここまで弄ってきたので、もうわざわざ乗り替える気にはならない」と答える。

◆◆◆

 宮城でプロボックスをカスタムする加藤さんは、もとはVIP系セダンを乗り継いできたが、結婚・子育てを経て「家族でも使いやすい車」へと舵を切り、最終的に商用バンへ行き着いた。

夫婦ともに車関係の仕事についているため、車弄りの自由度は高いという

 妻の勤め先がカスタムショップで、夫婦ともに車関係の仕事に就いているため、「弄るときには妻に伝えはするが、返事は待たずに手をつけてしまう」という自由度の高い環境だ。かつてはサーキット走行も試みたが「まったく上達しなかった」とあっさり認め、今はドレスアップ一本に絞っている。

商用バンとしてお馴染みのプロボックス。競技車両のような雰囲気をかもし出す

 18歳の息子がようやく車に興味を持ちはじめたことを「ちゃんと自分たちの血を引いていたんだな」と安堵する姿に、車好き一家の温かみが滲む。

◆◆◆

 ムーヴにオーディオを積む「KOH」さんは、スポーツ系からドレスアップ、そしてオーディオへと流れ着いた。

普段はトラックドライバーとして働く「KOH」さん。自由な勤務形態が性に合っているのだとか

「単純にいい音で聞きたいというよりは、イベントで上を目指すにはオーディオが必須だから」という理由が正直なところで、調整のために周りに民家のない山奥まで赴くという徹底ぶりだ。

軽自動車の小さな荷台にオーディオを詰め込んだ

「世間の感覚からはかけ離れた趣味だとは思います。ただ、オーディオは一度手を出すと本当にキリがない」と苦笑しながら、仲間と「あぁでもない、こうでもない」と作業する時間を何より楽しむ。

◆◆◆

 カスタムの動機も車種も生活環境もまるで異なる四者だが、「オリジナル」を追い求める熱量だけは、不思議なほど共鳴している。

次の記事に続く 「ノーマルが一番」と言いながら人生で車に使った金額は4〜5億円…型破りな車好きが“見せるためのカスタム”に命を懸ける“納得の理由”

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。