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それぞれの作風や影響を受けたもの、こだわり

佐久間 そう言っていただけると嬉しいです。もともと、悲しいお話、とくに救いのないような終わり方をする作品が好きではないんです。辛くなっちゃうんで……。だから「読者の方をそんな気持ちにさせたくない」という思いが働いたのかもしれません。 『俺、つしま』における、主に猫の過去を振り返るエピソードの描き方はすごく印象的ですね。説明は少なめ、押しつけがましくないし、泣かせにこない……すごく丁度良い温度ですよね。その辺は意識して描かれていらっしゃるのですか?  

おぷう兄 妹も自分も、昔からジメジメしてない作風のものが好きなので、その影響だと思います。70年代のアメリカン・ニューシネマとか、その頃の東映の映画なんかですね。説明ゼリフも好きじゃなく、作品というのは「不親切」なぐらいが丁度いいのではないかと。それと、解釈は読んだ人がするのであって、「これはこうだ」と作者が決めつけたくない。ある人にとっては泣ける場面でも、別のある人にとっては最高に笑える場面みたいなのが理想です。

佐久間 すごく納得しました! そうか、映画っぽいんですよね。相手にゆだねる、ああいうスタイルすごく好きです。真似したいです(笑)。

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おぷう兄 佐久間さんの影響を受けたものや、こだわりもぜひ教えてください。

佐久間 小さいころから漫画はよく読んでいましたが、とくに「これに影響された」というものは、ないように思います。ドラマチックな展開よりも、日常のどうでもいい、些細な事柄が気になる方なので、そういうところを大事に描いていきたいです。猫漫画で言えば、猫の絵柄はあまりかわいすぎないほうが好みなので、そういう仕上がりになっていると思います(笑)。ところで、お兄さんと猫たちとの関係をお聞かせください。漫画にはお兄さんは出てこないので、気になってしまって。

愛猫との日々の暮らし

おぷう兄 妹と同じぐらい世話をし、同じぐらいかわいがっています。つーちゃん(つしま)とはくっついて寝るし、オサムさんも最近はずいぶんと慣れて甘えてきます。ちゃーちゃんのブラッシングは日課です。

『俺、つしま』にでてくる猫たちをご紹介 ©おぷうのきょうだい/小学館

佐久間 つーちゃんとくっついて……いいなあ(笑)。オサムさん、甘えてくるんですか! スゴイ……、漫画ではあんなに怒りんぼだったのに……たまりませんね! お兄さんも猫たちと仲良しだからこそ、あんなに温かい作品になっているんですね。オサムさんはもうほかの猫さんたちと、なんとなく仲良くしているようですね。最初は大きなケンカとかなかったですか? つーさんが初めて来たときにズン姐さんとの争いはなかったですか?

おぷう兄 つーさんはすごく温厚で、最初少しだけちゃーちゃんと折り合いが悪かったです。オサムさんともケンカはなかったのですが警戒はしていました。ちゃーちゃんとオサムさんは少しまだ警戒しあっているようです。ズンちゃんには最初から全員一目置いていて、ちょっかいも出さないし、ズンちゃんに叱られるようなことがあっても誰も文句はいいませんでした。それが猫の社会のしきたりなのか、あらかじめそういう話し合いでもあったかのようで不思議です。

外猫たちが置かれている現状

佐久間 えっ、つーさん温厚なんですか! あんなに鋭い目つきなのに(笑)。ちゃーちゃんと折り合いが悪かったというのも意外です。ちゃーちゃんは温厚そうだから……。ズン姐さん、かっこいい! 私の家の周りにも猫がいて、私たちが引っ越してくる前から隣の大家さんが3匹くらいいる外の猫にご飯をあげていたんです。大家さんと相談して、不妊手術もしました。私もみんなにご飯をあげるようになったのですが、猫が鉢合わせると大喧嘩で。だんだん力が強い猫だけが居着いて他の猫は来なくなってしまいました。たぶんよそでご飯をもらっていると思うのですが、心配です。つーさんたちのように、みんな仲良くしてもらいたいです。

おぷう兄 自分も、過去に飼ってきた猫はもちろん、野良猫もできる限り不妊手術を受けてもらってきました。でも、去勢してもどうしても凶暴な猫っていますよね。幸い、いま住んでいるところは地域猫の面倒を見てくれる人が多いんです。近所の方に聞く限りは、あぶれてしまった猫もなんとかなっているようです。どうしても折り合いがつかないこともありますから……。佐久間さんだけ、うちだけというのではなく、たくさんのお宅でみてあげることができればいいですね。夢みたいなことかもしれませんが、そう願わずにはいられないです。

佐久間 本当にそうですよね。まだまだ猫にとって平和な社会とは言えませんが、少しずついい方向に向かっているのかな、とは思います。私も10年くらい前までは地域猫のことを知りませんでした。『俺、つしま』は面白いだけでなく、外の猫が置かれている状況にも触れているので、読者の方が関心を持つ、良いきっかけになっていると思います。おそらくそれも、おぷうのきょうだいさんは視野に入れてのことだと思うのですが、その点も含めて「いい漫画だなあ」と感激した次第です。漫画って、結構著者の方の性格というか思想が出ると思うのですが、今回お話させていただいて、おぷうのお兄さんは漫画で感じた以上に誠実な方だと思いました。本当にありがとうございました。

佐久間さんが描き下ろした、つーさんと我が家の猫たちの絵。「“おじいちゃんの50倍”はたぶん本当です……というか、うちの猫の50倍大変でした(笑)」©佐久間薫

俺、つしま

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