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“日本人ゼロ”でも試合ができるJリーグに? さらなる一手、「日本人枠」とは

ヴィッセル神戸はすでに「11人のうち6人が外国人」を実現

2018/09/02
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「11人のうち6人が外国人」を実現させたヴィッセル神戸

 この機に乗じて、したたかに「多国籍化」を進めたのが、ヴィッセル神戸である。

 まず、外国人枠の3人はアンドレス・イニエスタ(スペイン)、ルーカス・ポドルスキ(ドイツ)、ウェリントン(ブラジル)、AFC枠の1人はキム・スンギョ(韓国)。さらに、提携国の選手を2人ほど抱えている。ティーラトン(タイ)とアフメド・ヤセル(カタール)だ。

 8月26日の横浜FM戦(第24節・●0-2)では、76分以降に計6人の外国籍選手がピッチに立っている。これは、Jリーグ史上初めてのことだった。

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7月からJリーグのピッチに立っているイニエスタ(スペイン)。年俸は32億超 ©文藝春秋
同じく神戸のポドルスキ(ドイツ)。こちらは年俸9億円といわれる ©文藝春秋

しかしアジアのチャンピオンズリーグでは外国人は「4人」まで

 だが、仮に神戸が来シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の出場権を獲得しても、6人を同時に使うことができない。ACLの外国人枠が「4」しかないからだ。うち1つはアジア(AFC)枠となっている。悩ましい問題があるわけだ。

 いくら門戸開放に踏み切っても、ACLにおける外国籍選手の増枠(あるいは撤廃)がない限り、アジア制覇を狙うJの強豪クラブは多国籍化を推進しにくい。従って、AFCへの強い働きかけ(規制緩和の要求)が必要になるのだろう。

Jリーグ、次の手は「日本人枠」?

 それ以外にも、日本の選手たちが出場機会を失うことになるのではないか――との懸念もある。そこで、Jリーグ側も相応の施策を考えているという。

 ざっくり言えば「日本人枠」だ。

 ドイツ・ブンデスリーガでは外国籍選手枠の撤廃に伴い、新たに「ドイツ人枠」を設けた。また、イングランド・プレミアリーグも「ホームグロウン(home-grown)・ルール」を導入。自国で育った選手の保有を課している。育成を疎かにできなくなったわけだ。

 競争と育成――この両輪を回して、リーグを活性化しなければならない。そもそも自国選手が育たなければ、外国籍選手枠の撤廃が単に国内の「労働力不足」を補うための窮余の策になり果ててしまう。

 各クラブの育成を促すためのインセティブが必要なら、アカデミー出身者の出場実績に応じて分配金を増額するような施策を打ってもいい。

神戸のように100億円規模を捻出できるクラブは、そうはない

 近い将来、外国籍選手枠を撤廃したとしても、瞬く間にどこもかしこも「多国籍軍」という事態にはならないだろう。いくら良質の選手を「外」から集めようとしたところで、先立つモノは金である。

積極的な投資でJリーグを盛り上げる楽天の三木谷浩史会長 ©文藝春秋

 例えば、神戸が獲得したイニエスタは3年契約で、年俸は約32億5000万円、ポドルスキは2年半の契約で、年俸は約9億円とも言われている。この2人に投じた金額だけで100億円を超えるわけだ。これだけの大金を捻出できるJクラブなど、そうはない。

Jクラブよ、今こそ明確な哲学を持て!

 実際、ヨーロッパでも育成型クラブはもとより、原則的に地元出身者でメンバーを固めるビルバオ(スペイン)のようなクラブもある。猫も杓子も「グローバル化」へ一直線というわけではないのだ。

 要するに、自分たちの在り様を決めるのは枠ではなく、各クラブの考え方次第。外国籍選手枠の撤廃は、Jクラブに「多国籍軍」という新たな選択肢を加えるということだ。

 そこに乗っかるも乗っからないも、ご自由にどうぞ――である。大胆な多国籍化を試みても「日本人がいないんじゃ、つまらない」と言って、ソッポを向かれるかもしれない。ともあれ、何を選ぶかはクラブの自由。それだけに、理念も哲学も指針もぼんやりしたクラブには、荷が重いかもしれないが。

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