アパレルは、顧客ターゲットを細分化し、ブランドを数多く立ち上げました。そうすることで、百貨店でショップ展開する機会は増えるし、百貨店も在庫リスクを負わずに新鮮な売場を維持できる。実に強靭なWin-Winの関係で、誰もがこれらの仕組みを“ノーベル賞的な発明”だと信じて疑いませんでした。家具や電化製品のようなフロアは削られる一方で婦人服のシェアは拡大の一途を辿り、まさにイケイケ状態です。しかし、好事魔多しで、三つの大きな落とし穴があったのです。

 一つは、売れ筋だけを追うために、どのブランドも似たような商品ばかりが並ぶ、同質化を招いてしまったことです。そしてもう一つが、人口動態の変化です。団塊ジュニア世代というボリューム層が年齢を重ねていけば、近い将来、市場が縮小していくという明白な事実に当時は目を背けていた気がします。

 そして一番大きな落とし穴は、リスクを覚悟でチャレンジする婦人服の専門家育成が困難になったことです。私は2007年の大丸東京店の増床移転の際には、新店計画の責任者として携わっていました。4階から6階まで婦人服売場としたのは、この時もまだ「婦人服伸長神話」を信じていたからです。とんでもない間違いだと気づいたのは、2008年からのリーマンショックの苦境を抜けた後、主力であるはずの婦人服の売上が、元に戻らなくなった頃でした。百貨店はフロア構成をすぐに変えることはできません。ずるずると婦人服偏重を続けたことが業界の停滞の大きな要因となったことは、間違いありません。

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好本氏が20年にわたり婦人服を担当した大丸心斎橋店 ©YANCHINGNOW/イメージマート

奥田さんの言葉は正しかった

 中には、変化の兆しに気づき、警鐘を鳴らしてくれた人もいました。

「君、アパレルと心中する気か?」

 2000年代の初め、当時の社長、奥田務さんは冗談めかした口調で、私にこう言いました。今思えば、この一言は正鵠を得ていました。

※この続きでは、失敗から学んだ教訓を好本達也氏が語っています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(わが人生最大の失敗 経営者篇)。

文藝春秋

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「君、心中する気か?」

出典元

文藝春秋

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