全員が「敵」のように思えた

 最大の失敗は、2013年の顧客クレジットカード情報の流出でした。上場を控えていた大事な時に、ハッキングに遭ってしまったのです。その前年にテレビCMを流し始め、知名度が上がったタイミングで狙われてしまった。この時、3か月後には上場する予定で、主要幹部8名ほどには無償で自社株を渡していました。でも、「事態を収拾して、お客様にお詫びすることに全力集中しなければならない。上場は延期する」と幹部らに通達したところ、「はしごをはずされた」と反旗を翻されてしまった。

西村誠司さん(右から2人目)が経営するエクスコムグローバルは、郷ひろみさん(右端)などのスターを起用したCMが有名 ©時事通信社

 当時の私は会社に常駐しておらず、アメリカに住んでいて、帰国するのは1か月に一度ほどでした。忘れもしません――ある日、自分の会社の会議室に呼ばれて行くと、それまで信頼していた幹部がみんなよそよそしい。そして「あと少しで上場してキャピタルゲインが入ったのに。上場できないなら会社を身売りしてくれ。それをしないのなら一斉退職して会社を潰してやる」と宣告されてしまいました。

 まるでドラマか映画の世界です。もう自分の会社なのに足が向かない。会社のドアを開けるのも怖い。全員が敵のように思え、もう日本にもいたくない。すぐに予定を変更してアメリカに戻りました。乗り継ぎで降りたLAで手羽先の有名店「風来坊」に入り、ひとりで酒を飲んだものです。

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 そして自分はどうしたかというと、会社を身売りする“振り”をしました。

※この続きでは、失敗からの再起の過程が語られています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(わが人生最大の失敗)。

文藝春秋

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会社に行くのが怖かった

出典元

文藝春秋

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