運転中に意識喪失、車の速度はどんどん上がり……
その後、時速30~40kmで走行中に痙攣発作で意識を喪失。制御が利かなくなった車の時速は70kmにまで達した。その結果、同一方向を走行していた原動機付自転車に乗っていた25歳男性に衝突。被告人車両は、縁石に乗り上げ街灯に衝突したところでようやく停車した。
その後も意識喪失は継続しており、約4分後に意識が回復したところ、すでに臨場していた警察官に現行犯逮捕された。被害者は同日に亡くなった。
この起訴事実に対し言い分を答える罪状認否において、被告人は「いや……(間違いは)ないと思います」と自信なさげに答える。そのはっきりしない答えに遺族の感情はいかようであったか、想像に難くない。
しかし、被告人がこのような答え方になるのにも理由があった。被告人は、てんかんの症状を有している他に、軽度のアルツハイマーとの診断も受けており、認知機能の低下を医師からも指摘されていた。そしてこれらは、事故の発生原因となっただけでなく、事故後の対応など様々な形で当事者らを苦しめていくことになる。
以前にも、交通事故を起こしていた
公判で明らかになった被告人の病歴と、運転との関連は次の通りだ。
約20年前、被告人は自身の記憶の減退を感じて検査したところ、解離性障害と診断される。それ以降、仕事の必要事項はメモを残さないと対応が困難になった。一方で、日常生活においてメモを残したりはしていなかったという。被告人は「日常生活では支障がなかったので(メモはしなかった)」と法廷で供述したが、それが十分でなかったことはその後の経緯からも明らかであった。
てんかんの疑いがあると診断されたのは、事故の約4年前。筋肉が急に固まるなど身体に異変を感じたところ、てんかんの疑いがあるとして薬を処方された。そして、その数カ月後には自転車との衝突事故を起こしてしまう。
同乗していた妻は、被告人の手が震えだして痙攣をした様子を見たという。その経験から、車に乗らない方がいいと伝えた。しかし、被告人は法廷において、その事故の記憶を蘇らせることはできなかった。
