猫を飼う人であれば、誰もが恐れる「慢性腎臓病」。だが、現実は「なりやすい」どころの話ではない。AIM医学研究所所長の宮﨑徹氏は、静かだが確信に満ちた口調で「ほとんど全ての猫が慢性腎臓病になってしまう」と断言する。

 なぜ、多くの猫が同じ病気で命を落とすのか。答えは環境や食事ではなく、猫という生き物が抱える「先天的なバグ」にあった。(全2回の1回目/続きを読む

【年内には実用化へ?「死因1位」猫の腎臓病治療薬の全容】「AIM」とは何か|猫にはなぜ腎臓病が多い?|副作用・値段は?|愛猫家からの寄付が会社設立の契機に|小澤征爾からの一言で「医師の道に」【宮﨑徹】

(初出:「文藝春秋PLUS」2026年4月18日配信)

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猫だけが抱える致命的な欠陥

 宮﨑氏はもともと消化器内科の臨床医だった。病棟に立つうちに、何十年もかけて進行する慢性腎臓病を止めることも治すこともできないという事実を目の当たりにして愕然とし、研究の世界へ転じた。そこで発見したのが、血液中に存在するタンパク質「AIM」だ。

 AIMの役割は、腎臓病の原因となる「体内のゴミ」を処理すること。宮﨑氏はこれを「粗大ごみのシール」に例える。細胞の死骸や壊れたタンパク質といった腎臓に炎症を起こすゴミが出ると、血液中のAIMがその台紙であるIgMから剥がれてゴミにペタッと貼り付く。それを目印に「清掃車」である免疫細胞がやってきて、ゴミを食べて処理する。このシステムが機能している限り、腎臓にゴミは溜まらない。

宮﨑徹氏

 ところが、猫は違った。猫の体内にもAIMは存在しているが、「台紙から剥がれない」のだという。必要なときにシールとして機能しないため、腎臓にゴミが溜まり続け、炎症という「火」が腎臓を焼き尽くしていく。

 しかもこれは、イエネコだけの問題ではない。「ライオンもチーターも、ネコ科は全員これなんです」と宮﨑氏は語る。これは個体差でも飼育環境でもなく、ネコ科全体が共有する絶望的な「先天的バグ」なのだ。