映画『ボタニスト 植物を愛する少年』は、中国の西北部に位置する新疆ウイグル自治区が舞台。広大な自然に息づく動植物や精霊たちと少年との対話を詩的なモノローグと映像美で描き出し、ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門でグランプリを受賞するなど、世界の映画祭で評価された。

 監督は新疆出身で、本作で長編デビューを果たしたジン・イー(景一)。中国から生まれた新しい才能として注目されている。首都北京から新疆までの距離は約3000キロ。新疆の大地が新時代の監督の感性をどのように育んだのか、ジン監督にお話を聞いた。

ジン・イー監督

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人と自然の関係がとても近い村で育った経験

――『ボタニスト』は、植物の観察を日課にしているカザフ族の少年と、漢族の少女との淡い初恋のような関係を、美しく豊かな自然の中で描いています。舞台はカザフスタンまでたった5キロ、中国で最も北西に位置する新疆ウイグル自治区の村。監督の故郷をイメージした設定ですか?

『ボタニスト 植物を愛する少年』

ジン・イー監督(以下、ジン) 私の故郷も新疆ウイグル自治区の西北部にあり、複数の国と国境を接しています。幼い頃から、この映画に出てくるような村で育ちました。午後まるまる屋根の上でのんびり過ごしたり、友人の家に遊びに行ったり、木陰で休んでいるうちに1日が終わったりするような日々を送っていました。

 人と自然の関係がとても近く、周りにあるもの全てが自分と対等に並んでいるような感覚で過ごしていたので、この映画の中では、たとえば人の顔から木の根へ、人の顔から空へと視線が移るようなショットを多用しています。そうすることで人と自然を結びつけようという意図がありました。人と自然とのつながりは、私が新疆で過ごした子供時代の大切な一部です。その場所の風景、その場所の大地というのは、人が世界をどう感じるのか決定づけ、形づくるものだと思います。