カザフ族の少年と漢族の少女

――主人公の少年をカザフ族に、少女を漢族にした理由は? 子供の頃からカザフ族と頻繁に交流していたのですか?

ジン 新疆は、さまざまな民族が集まっている地域です。ウイグル族、カザフ族、モンゴル族、それに漢族もいます。いろいろな民族がひとつの村の中で暮らしていて、影響し合っている部分が数多くありました。

 カザフ族は遊牧民族なので、草原や自然とのつながりがとりわけ深く、植物や自然に対して、私たちとは異なる独自の知恵を持っています。私も彼らと同じ土地で育ったことが、この映画のスタイルを形づくるもとになったのかなと思います。

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『ボタニスト 植物を愛する少年』

 子供の頃から、少数民族の友達はいました。この映画で子供2人の民族が違うという設定にしたのは、私には異なる植物のように思えるからです。植物は種類によって異なる性質や習慣を持っています。私たちもそれぞれ異なる文化的な蓄積があり、家庭の影響を受けています。それでも同じ大地で共に育ち、同じ新疆の風景と村の暮らしを分かち合っています。

 2人の子供という親密な2種類の植物を通して、互いについて全く知らない民族でも、言葉が違う民族でも、純粋なかたちで触れ合い、通じ合うことができるということを、この映画を通して伝えたかった。人間と植物、人間と自然との出会いのように、それはとてもシンプルで、偏見も、隔たりもないものだと思うのです。

異なる文化的背景を持つのは当たり前のことだった

――主人公の少年は、普通話(いわゆる中国語)も話せます。実際に監督と交流があったカザフ族の友達は、監督と同じ小学校に通い、普通話で教育を受けていたのですか?

ジン 小学校では、異なる文化的背景を持つ子供たちが自然に同じ時間を過ごしていました。地域によって使われる言葉もさまざまで、その土地ならではの空気がありました。互いの言葉を自然に話せる子供たちも多く、私にとってはそれがごく当たり前の風景でした。

『ボタニスト 植物を愛する少年』 ©MONOLOGUE FILMS

――時々ラジオから新疆の経済発展を伝えるニュースが聞こえてきます。あの演出の意図は?

ジン この映画では、人と人との関係だけでなく、時代の移り変わりの中で少しずつ変化していく土地の空気も描きたいと思っていました。人々の暮らしや風景が静かに変化していく感覚は、私自身が育った場所の記憶ともつながっています。その重なりの中に、この土地ならではの感覚を映し出せたらと思っていました。