「彼女の真面目さと、あの素直さと、あの純粋さ。それは生活の中で分かるからね。裏表ないからね、意外と。俺はやっぱりちゃんと応援したいっていう気持ちは昔からずっとあった。だから一緒になったところもあるんで……。やっぱな、女性やから、永田町では、なんだかんだ言うやつもいっぱいおる。男の嫉妬の方が強いからさ。だから、そこらのおっさんに対するボディガード役にならんと。そう、いつも思っていましたけどね」

 拓は明るく、ざっくばらんな性格。相性のよさを感じてくれたのか、その後も連絡を重ねているうちに、「あなたは、なんだか信用できそうな人だから電話しているんだ」と言うこともあった。

自由党結成時の拓氏(後列左)、高市氏 Ⓒ時事通信社

 筆者は次第に、日本初のファースト・ジェントルマンの肉声を歴史的記録として残したいと思い始めた。高支持率を背景に、2月の衆院選で自民党を歴史的大勝に導いた女性初の総理。その夫だけが知っている総理の「実像」があるはずだ。

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 無論、拓が二つ返事で取材に応じたわけではない。だが、最終的には彼流の冗談を交え、「あなたフリーランスやろ? 収入アップには協力しますよ(笑)」と取材を了承した。さらに「病気のこともいつまでも黙っているわけにはいかない」と言う。一方で、リハビリ中の身であることから「俺はマスコミには出ない“ステルス旦那”や。こうした形の取材を受けるのはこれが最後。今後も他の人の取材に応じるつもりはない」とも語った。拓はセキュリティの厳しい公邸に住んでいる上、療養中であることも考慮し、取材は合計11回、累計すると約20時間の電話インタビューで行った。

高市「ワーキングケアラー」説が出たワケ

 国会議事堂から坂を下るとガラス張りの首相官邸の脇に、古びた洋館がそびえ立つ。昭和初期の建物を改修した首相公邸である。高市夫妻は昨年12月末に、衆院議員宿舎からこの場所に入居した。

結婚披露宴にて Ⓒ日刊スポーツ

 ヴェールに包まれた公邸での夫婦生活を、噂好きな永田町の住人たちは様々に取り沙汰してきた。「総理は公邸に戻ると、夫の介護にかかりっきり」、「入浴の介助までしている」。高市に近い自民党幹部ですら、そんな認識をもっともらしく周囲に語る。

 今年1月には毎日新聞が、高市が周囲に拓の介護を「ワンオペでしている」と漏らしているとした上で、高市が仕事を続けながら介護に従事する「ワーキングケアラー」の可能性があると報道。「週刊新潮」も同時期、高市と拓が言い争い、「離婚危機になった」と報じた。

 自身を巡る様々な声について、拓は「困ったこっちゃな……」とため息を漏らす。

「高市に隙がないなら、その周辺を洗おうっていうことで、いろいろデタラメを書かれているんやな。安倍(晋三)さんの時に奥さん(昭恵夫人)の問題があった。今度はファースト・ジェントルマンのネタで、というワンパターンや。ちょっとした噂ぐらいはええかと、俺は何ひとつ反論したことなかったが、さすがにこれはという気持ちもあるな」

 不確かな報道に反論したいという気持ちも、筆者の取材に応じた動機の一つなのだろう。

(文中敬称略)

※2万字以上の記事全文は、「文藝春秋」2026年6月号及び、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と掲載されています(河野嘉誠「総理の夫 山本拓 初告白20時間〈消えたファースト・ジェントルマン〉」)。

全文では、以下の内容が語られています。
・都会の生意気なカンカン娘
・「彼女は政治と結婚したんやな」
・高市は“赤ペン先生”

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】高市早苗研究 総理の夫 初告白20時間/〈特集〉「歩く」が人生を変える/りくりゅう秘話

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