神岡鉱山で採掘されていた亜鉛もまた然りで、全国で重宝される傍ら、工場の排水は神通川に垂れ流しにされていた。その中に混ざっていたのが「カドミウム」という物質だ。カドミウムは我々が普段食する米にも1キロあたり0.05ミリグラム程度含まれている。が、神通川の水に混ざっていたのは1キロあたり1ミリグラム。現在の法律で1キロあたり0.4ミリグラムで販売禁止になることを考えると、異常なまでに高い数値だ。

 前記したように、神通川の水は田んぼに引かれ、長年米作りに利用されてきた。田んぼは一度水を張ると基本的に何ヶ月も張りっぱなしのため、稲はその間、カドミウム入りの水を吸い続けることになる。結果、出来上がるのが毒と化したカドミウム入りの汚染米。これがカルシウムの吸収を極端に邪魔し、骨をスカスカにするのだ。

病の原因はわかったが⋯

 1955年、謎の奇病を調べるため『富山新聞』の記者が取材に訪れた際、看護師が患者を「イタイイタイさん」と呼んでいると聞き、萩野はそのまま「イタイイタイ病」と命名。1957年に開催された富山県医師会で、神岡鉱山から神通川に流された汚染水を利用した作物を摂取し続けたことが病気の原因とする「鉱毒説」を提唱する。

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 その後、他の農学者、疫学者の力を借り研究を進め、1961年6月には日本整形外科学会において、同鉱山が廃棄した水に含まれるカドミウムが病を発症させていることを正式に発表。

 同時に、出産を経験した女性に患者が多いのも、彼女たちが過酷な農作業に就き日常的にカルシウムが不足していたことに加え、妊娠後は「脱灰作用」により、さらにカルシウム不足になり、そこにカドミウムが入り込むことで骨がスカスカになると、その理由を説明した。

 しかし、この発表に対する世間の反応は極めて冷たかった。

次の記事に続く 「売名行為はやめろ」「誰も嫁に来てくれなくなる」イタイイタイ病の原因を発見したのに批判殺到⋯“酒浸りとなった医師”はなぜあきらめなかったのか(昭和46年の事件)