企業への就職も考えた

 東大ではクラシックピアノを弾くサークルと、バンドのサークルに入りましたが、時間的にはバンドサークルの比重が高かったですね。ピアノは1人で完結するのでリハーサルはさほどありませんが、バンドは全員が揃っての練習が必須だからです。文化祭で半年に1回演奏し、合宿も年に2回あって楽しかった。3年生の時には、バンドのサークルを母体に6人組のシティソウルバンド「Penthouse」を結成し、2021年にメジャーデビュー。今年3月には武道館で単独ライブを行いました。

演奏する角野氏。緊張が高揚感に変わるときだ Ⓒ文藝春秋

 その後、東大大学院の情報理工学系研究科へ進んだのは、自動採譜と自動編曲を研究するためです。自動採譜とは、簡単に言えば聴いた音を自動で楽譜に変換する、つまり人間でいう耳コピを機械に落とし込むことです。9年前は現在のような高機能ソフトやAIもなく自動採譜なんて実用からは程遠いレベルでした。いまははるかに進歩していますね。

 研究のかたわら、ピアノは続けていました。2018年に出場した、日本最大規模のコンクール「ピティナ・ピアノコンペティション」(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会主催)では、最上位の特級グランプリを受賞。これをきっかけに本格的に演奏活動を始める一方で、じつは卒業前までは理系の学生によくある「企業へインターンに行って、そのまま就職して研究者になる」という人生も考えていたのです。実際にインターンとして、Preferred NetworksというAI系の企業で働きました。社内の課題を解決するためなら自由にテーマを決めてよかったので、ここでも音声認識系を研究していました。

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 2020年に大学院を修了し、その翌年には世界最高峰と言われる「ショパン国際ピアノコンクール」に出場して、セミファイナルまで進みました。もともと前年に出る予定だったのが、コロナで延びた。こうして音楽に関するいくつかの出来事を経て、自然と音楽の道へ進んだのでした。親も、研究室の先生もピアノの先生も、「まぁ、そうだよね」という雰囲気でした。

※角野隼斗さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧下さい

※本記事の全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(角野隼斗「開成、東大からカーネギーホールまで」)。全文では、以下の内容が語られています。
・演奏で足が凝ることも
・AIにできない生演奏
・「坂本龍一さん風に」

文藝春秋

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角野隼斗「開成、東大からカーネギーホールまで」

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】高市早苗研究 総理の夫 初告白20時間/〈特集〉「歩く」が人生を変える/りくりゅう秘話

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