服は単なる「見た目」ではなく、権力・外交・国家の象徴として機能してきた。平芳裕子氏による『何がダサいを決めるのか』(ポプラ社)は、ファッションにおける「ダサい」あるいは「かっこいい」という感覚がどのように形成され、社会的にどのような意味を持つのかを問い直す一冊だ。本稿では、そのなかから「政治家のファッション」について、一部を抜粋してお届けする。(全4回の3回目)
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2025年10月に高市首相が就任してから約1ヶ月後、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)が南アフリカで開催されました。アメリカのトランプ大統領は欠席しましたが、世界の主要20カ国首脳が参加する重要な会合です。この会合に先立って、高市首相が南アフリカのヨハネスブルクに向かう途中で投稿したXのポストが話題となりました。
高市首相が悩んだ“洋服選び”
それによると、サミットのセッションや首脳会合が2日間、移動を含めると4日間もの出張の準備に際して「悩みに悩んで凄く時間がかかったのが、洋服選び…。」だったそうです。この洋服選びに悩むことになったきっかけは、11月14日の参議院予算委員会における安藤裕参議院議員の次のような発言だといいます。
「これから、高市総理はじめ、各閣僚の皆さんも、世界各国のトップと交渉しなくてはなりません。そのときに、できれば日本最高の生地を使って、日本最高の職人さんが作った服でしっかりと外交交渉してもらいたいんですよ。安物の服で対応していたらなめられます。」
国を代表する立場にある人物が、国産品を身につけることはよくあります。歴史的には、イギリスのヴィクトリア女王や、日本の昭憲皇太后なども、パリの流行に倣いながらも、国内産業振興のために、国産の生地を使ったドレスを身につけました。
近年の日本の政治家でも、地方を訪問する際にはその土地の伝統織物によるネクタイなどを身につける例もあります。そのため、日本の製品を身につけることを勧めること自体は珍しくありません。注目したいのは、最後の発言です。
「安物の服で対応していたらなめられます」。
なめられるとは、「軽視される」「侮られる」「下に見られる」という意味です。服装で馬鹿にされてはいけない、というのです。これは、明治初期の岩倉使節団が、洋服に着替えた一件を思い起こさせます。条約改正を目指して「みくびられてはならない」ので、西洋の人々と同じスーツを着ることにしたのでした。
では、そのようなアドバイスをもらった高市首相はどうしたのでしょうか。Xのポストには次のように述べられています。

