新内閣発足時に撮影される記念写真。首相官邸の赤い絨毯の上で、首相と閣僚がモーニングコートに身を包んで整列するその光景は、日本では見慣れたものかもしれない。しかし2024年、石破内閣の記念写真がSNSで炎上し、欧米メディアにまで報道される事態となった。

 そもそもなぜ日本の閣僚たちは夜でもモーニングコートを着るのか。その「フォーマル」な装いは、いったい何を意味しているのか。ファッション文化研究者の平芳裕子氏が「ファッション」を鋭く読み解く、『何がダサいを決めるのか』(ポプラ社)より一部を引用してお届けする。(全4回の4回目)

夜でも「モーニングコート」を着る理由とは? ※写真はイメージ ©AFLO

◆◆◆

ADVERTISEMENT

「ダサい」「みっともない」…石破内閣の集合写真はなぜ炎上したのか

 2024年に発足した石破内閣の記念写真がさまざまな批判を呼び起こしたことを、覚えている方も多いと思います。日本では新しい内閣が誕生すると、首相官邸で記念写真を撮る習慣があります。官邸の赤い絨毯敷のうえで、首相や閣僚がモーニングコートを着て撮影に臨みます。

 モーニングコートとは、前から後ろ裾にかけて曲線的に尾を長く引く上着と、縞柄のズボンを合わせる礼装です。このとき首相と閣僚も慣例に従って、モーニングコートを着ていました。いったいなにが問題だったのでしょうか?

 閣僚たちが身につけているのは確かにモーニングコートだったのですが、その着こなしが無作法だとされたのです。モーニングコートは前裾を短くカットしたスタイルとなりますので、通常はベルトではなくサスペンダーを用います。サスペンダーでズボンを吊るすことで折り目がピンと張って、全体としてすっきりと引き締まった印象となります。

「軽微な修正」が施された石破内閣の写真(首相官邸HPより)

 ところが、前列に並んでいた閣僚はサスペンダーを用いない人が多かったのか、ウエスト部分のシャツがあらわになっていたり、ズボンの裾がだぶついてシワシワになっていたりしたのです。その様子に気づいた人々が口々に指摘をはじめ、SNSで炎上騒ぎとなりました。新聞・テレビなどの大手メディアもこの事態に気づき、スーツの本場である欧米にまで報道されることとなりました。