2024年頃にネット上で話題となった「40歳近くになってパーカーを着ているおじさんは結構おかしい」という発言。この一言が、ファッションと年齢・ビジネス・社会規範をめぐる議論の火種となった。その背景には、何があるのか? 神戸大学大学院教授・平芳裕子氏の著書『何がダサいを決めるのか』(ポプラ社)より、一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目)

「40歳近くになってパーカーを着る」のはおかしいのか? ©AFLO

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 1990年代から2000年代にかけて、アメリカのカリフォルニア州南東のシリコンバレーには多数のIT関連企業が設立されました。ヤフー(Yahoo!)、グーグル(Google)などの企業に加えて、フェイスブック(Facebook、現Meta)などのソーシャルメディア関連の企業も設立されました。

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 そういった企業の多くは、新しい技術を開発し、私たちの社会と生活をより便利に変化させていくと同時に、旧来のビジネスモデルや慣習に囚われない、新しい働き方を取り入れました。服装もスーツにこだわらずに、カジュアルなスタイルでした。

「おじさんがパーカーを着るな」はエイジハラスメント?

 同じように、日本のインターネットや情報関連技術にかかわる人々が、カジュアルなスタイルで仕事をし、メディアに登場し、注目されるようになります。堀江貴文氏がライブドアの前身となるオン・ザ・エッヂを設立したのは1996年のことでした。

 堀江氏はさまざまな活動をしていますが、襟付きシャツのほかTシャツを着用していることも多いようです。Tシャツはもともと下着とみなされていた服であり、ジーンズと同様に戦後にカジュアルウェアとなりますが、ビジネスの場で着られる服とはみなされていませんでした。

 また、かつて「2ちゃんねる」の開設によって日本最大のインターネットフォーラムの管理人となったひろゆき(西村博之)氏も、Tシャツや半袖の襟付きシャツ、パーカーなどのラフな姿でメディアに登場しています。

1999年に匿名掲示板「2ちゃんねる」を創設したひろゆき氏(2006年撮影) ©文藝春秋

 インターネット関連事業に携わる人々のカジュアルなスタイルに、近年のパーカー人気が加わって、パーカーもよく着用されるようになりました。パーカーは、カジュアルな服装の一つであり、スリーシーズン対応できる便利な服です。そのなかで、「40近くになってパーカーとかを着ているおじさんは結構おかしいと思う」という発言が飛び出し、パーカーの着用問題が注目されるようになったのです。

 当時、その発言を「エイジハラスメント」とみなす意見をありましたが、「おじさんがパーカーを着るなとか…言うのはエイジハラスメントじゃないですかね!!」と投稿したのが堀江氏です。