1881年に創業した日本を代表する書店チェーン・三省堂書店が、創業の地である神保町に「神田神保町本店」をリニューアルオープンさせた。新たなビルは13階建てのうち書店フロアは1階から3階。それより上階にはテナントが入り、売り場面積は旧本店の7割、本の在庫数は約70万冊から約50万冊に減ったものの、オープン日から多くの客が押し寄せ、本店復活が待ちわびられていたことを証明。いまも店内は、若者から中高年まで幅広い世代で一日中賑わっている。
プロジェクトを主導したのは、三省堂書店社長の亀井崇雄氏(50)。その亀井社長が旗艦店の内装設計を託したのが、国内外の住宅を中心にキャリアを重ねてきた建築家の長谷川豪氏(48)だった。出版不況が叫ばれる中、都心の一等地で建て替えに踏み切った狙いから、本の町・神保町と書店の未来まで新本店の一角で語り合った。
◆◆◆
“本と目が合う”
亀井 1階正面から売り場に入ると、本に360度囲まれて「こっちに来て、私を買って」とPRされるようです。こんな体験は他ではできないと思います。
私の一番のお勧めは、2・3階の壁面にある「探求の洞窟」(下の画像)。棚の前に立つと、ぐるりと三方、本に囲まれて圧倒されます。
長谷川 探求の洞窟には、文庫や新書、コミックを並べていますが、レーベルごとに分けているので、統一感のある背表紙が綺麗ですよね。大きな書店こそ、書斎のように本に没入できる小さな空間が必要だと思ったんです。
亀井 店舗全体では、本を平積みで陳列する「平台」を減らし、できるだけ本を棚に差して、たくさんの背表紙をじっくり見ながら本を選べる贅沢な空間作りをめざしました。
長谷川 開店後の反響で嬉しかったのは、「これだけ“本と目が合う”書店は初めて」と言ってもらえたことです。今回のコンセプトは「本のランドスケープを作る」こと。書棚のレイアウトや高さを調整して、一度にたくさんの本が目に飛びこんでくるようにしました。


