リアル書店の強みを生かして

 亀井 2階の「発見のさざ波」が好例ですね。通常の書店のように通路に直角に書棚を並べるのではなく、棚自体も斜めに設置し、端を丸くして見通しが良くなっている。

 長谷川 隣のジャンルの書棚に意識がスライドするように設計しています。棚の真ん中をくり抜いた「没入キャビン」(下の画像)はベンチであるとともに、くり抜かれた穴の先に見える別のジャンルの本に興味をもつきっかけになればと考えました。

棚の間のベンチ「没入キャビン」。向こうの棚もよく見える Ⓒ文藝春秋

 亀井 違う棚と言っても、完全に違うジャンルではなく、少し関連するくらいがミソですね。

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創業の地に新本店をオープンさせた亀井氏。店名に「神田」を付けた理由とは…… Ⓒ文藝春秋

 長谷川 はい。売り場の中心から放射状に本棚が並ぶ3階の「みちびきの渦」(下の画像)も、ジャンルを横断する体験を考えながら棚を配置しました。実際に「気がついたら、興味のなかった棚の前に立っていた」という声も聞きました。

「みちびきの渦」。独特なレイアウトでつい「いつもの棚」以外にも足が伸びてしまうレイアウト Ⓒ文藝春秋

 AIにパーソナライズされたネット書店のレコメンド機能は便利ですが、どんどん自分の世界が狭くなっていくような感覚がありますよね。「お前、これが好きなんだろ」と先回りされるのも癪に障る(笑)。この店では、書店でなければ出会えなかった「偶然の一冊」を自ら歩いて見つけてもらいたいです。リアル書店の強みは、本を手に取って中身もじっくり確認できること。新しいジャンルにどんどん足を伸ばしやすいはずです。

※本記事の全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年6月号に掲載されています(亀井崇雄×長谷川豪「三省堂書店と建築家が挑んだ 神田神保町本店『知の渓谷』」)。

出典元

文藝春秋

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2026年6月号

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