「できない役はない」と言い切る理由

 このように日々の人間観察から自分のなかにストックしたものを、オファーされる役に合わせて引っ張り出してきては演じる方法を、堀内は「似てないモノマネ」と呼ぶ。あくまで他人をモデルにしているので、自分との共通点や距離感などはあまり関係ない。

《だから、できない役はないです。いじわるな役とか、やっていてつらい役はありますけど。ポンッと役に入れるわりには、抜く時が難しくて。どうしても、普段からずっと役柄について考えちゃうので、苦しい役の時は苦しくなります》(『CUT』前掲号)

「できない役はない」と言い切ってしまうところに堀内の自負がうかがえる。ドラマ『秘密』(2010年)で大事故を起こした加害者の妻を演じたときは、現実にはまだ結婚しておらず、子供もいなかったので、全力で役にハマるあまり、本当に苦しかったという。ただ、結婚して子供を持つと、いままでのように役にのめり込めなくなり、それはそれで少しつらいとも明かしている。

43歳、不妊治療を経て出産

 子供を儲けたのは43歳のとき。不妊治療を始めるとすぐに妊娠して、医師からは「奇跡だ」と言われた。だが、40代に入ってからの初産ということもあり不安は大きかったという。それだけに新生児集中治療室のある病院を選ぶなど万全の態勢で臨み、無事に男児を出産した。

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 子供が小学校に上がるころには、出演するドラマを一緒に見るようになったという。当時のインタビューでは《混乱するといけないので、『ママはいろんな役をやるので、テレビでは殺されたり、病気で死んだり、いろいろあるんだよ』って説明しています(笑)》と話していた(前掲、「ENCOUNT」)。その役の幅広さからすると、息子さんもついていくのが大変そうだが、NHKの朝ドラ『エール』(2020年)で、主人公の恩師の妻を演じた堀内が妊娠して大きなお腹になっているのを見たときは、「あれはママ、嘘だよね」としたり顔で指摘されたというから、幼いなりに理解してはいるらしい。

NHK朝ドラ『エール』で共演した窪田正孝、井上希美、山崎育三郎と(堀内敬子のインスタグラムより)

 出産前後には舞台の仕事をしばらく休んだものの、その後、徐々に復帰している。近年の舞台では、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の『骨と軽蔑』(2024年)で“虫の妖精”に取り憑かれる編集者を演じていたのが、まさに憑依型俳優・堀内敬子の面目躍如で印象に残る。