残っていた男性ホルモンを振り絞ったが……
大会のひと月前に、それまで飲んでいた経口の抗がん剤「ユーエフティ」が効果を示さなくなってきたので、「エストラサイト」という「やや強い薬」に変更した。するとすぐに、吐き気と倦怠感の副作用に見舞われるようになった。食欲がピタリと止まり、酒も飲めなくなってしまった。
小路直医師によるとこの薬は「ユーエフティに較べれば多少強い程度で、決して強力な薬ではない」とのこと。たまたま僕の体質に合わなかったのだろう。朝起きた瞬間から夜眠りに落ちるまで、とにかく気持ちが悪くて仕方ない。気持ちが悪いから食べない。だから体重が減っていく。5月のひと月で体重が5キロ以上も減ってしまった。
そもそも薬の副作用と運動不足で増えた体重である。それに、ランナーにとって体重が減ることは、そのままタイム短縮に直結するのでありがたい話だ。
しかし、僕の場合は「体重」と一緒に「元気」も無くなっていった。ちょっと階段を上ると息切れをする。つねに顔色も悪く、誰が見ても「この人は病人だ」と分かる雰囲気が僕の周囲に漂っていた。
そんな状態で出場したリレーマラソンは、当然のことながらひどい結果に終わった。
2年前まで毎日のように走っていた神宮外苑は、1周が1.325キロ。今回のリレーマラソンの1周回の距離とほぼ同じだ。元気なころは神宮外苑を最低でも4周、調子がいいと16周走っていたのだが、当時の1周のラップは5分35秒~45秒だった。なので今回は、2年のブランクを考慮して1周回を6分台前半で走れればいいかな……と思ってタスキを受け取り、走り始めたのだが、ものの200メートルも走ったところで早くも体力が空っぽになってしまった。残りの1.2キロを“精神力”という実体のないエネルギーで走らなければならなくなったわけだが、それは所詮無理というものだ。失速した僕は数えきれない数の後続ランナーに追い抜かれた。中には見るからに会社単位で出場したため断り切れずに出場してチンタラ走っている女性や、「ジュゴン」の僕によく似てはいるがちょっと違う「マナティ」のような体形のおじさんもいたが、そのすべての人たちに僕は抜かれた。一人だけ、超スローペースの高齢女性を抜いたが、それもしばらくは並走状態だった。
※長田昭二氏の本記事全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています。全文では、下記の内容についても触れられています。
・「休薬」で身体はどう変化したか?
・笑って「免疫力」が上がった?
・「この血液がアメリカに行くんだな……」


