「僕の前立腺がんレポート」を連載中だった長田昭二さんが、6月14日に亡くなった。文藝春秋編集部ではご親族の了承を得て、闘病生活にかかわった方々のインタビューを連載番外編としてお届けしています。今回は、主治医だった東海大学医学部腎泌尿器科学領域主任教授の小路直(すなお)医師に、長田さんの闘病生活について聞きました。
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長田さんの主治医になった経緯
――そもそも、先生が長田さんの主治医になったのはいつ頃で、どんな経緯からだったのでしょうか?
小路 2016年末ごろ、前立腺がんの「ターゲット生検」(MRI画像で目標を定めて針を刺し、組織を採取する検査方法)について、私がメディアの方に紹介するセミナーで知り合いました。全体の説明が終わった後に、主催者の方から「長田さんという方が1対1で話したいそうです」と声を掛けられて、個室でお話をしました。夕刊フジの長田さんの連載「ブラックジャックを探せ」に、私の記事を載せたいという話でした。
ですから、はじめの出会いはあくまで取材でした。ただ、その時すでに、「実は、自分もPSAが高いんですよ」と話されていましたね。
《編集部注:長田さんは2016年8月、炎天下でジョギングした後、血尿が出たことをきっかけに内科医院を受診。検査の結果、血尿は脱水症によるものだったが、PSA(前立腺がんの腫瘍マーカー)が正常値内ではあるものの高い値が出た。その後、3カ月に1度検査を受けたが、微増が続いていた。
〈かかりつけ医は泌尿器科の受診を勧めるが、僕は躊躇していた。理由は2つある。1つはがんが見つかると、そこから先の生活がとても面倒になることが予想されること。もう1つは検査そのものが苦痛と羞恥を伴う――という思い込みによるものだった。より詳細な検査を勧めるかかりつけ医に、「仕事の忙しさ」を理由に、泌尿器科の受診を後回しにし続けていたのだ。〉「僕の前立腺がんレポート」第1回》
――セミナーに参加した頃は、かかりつけ医に泌尿器科の受診を勧められた頃ですね。
小路 私のセミナーに取材に来たのも、自分ごととして治療法に興味があったのかもしれませんね。でも、当時勤務していた東京・八王子の東海大学医学部付属八王子病院に来院したのは、出会ってしばらく経った2018年のことです。「自分もちょっと診てほしい」「MRIを撮りたいんです」と話されていました。

