僕の前立腺がんレポート」を連載中の今年6月に亡くなった医療ジャーナリストの長田昭二さん。文藝春秋編集部ではご親族の了承を得て、闘病生活にかかわった方々のインタビューを連載番外編としてお届けしています。

 

今回は、主治医だった東海大学医学部腎泌尿器科学領域主任教授の小路直(すなお)医師に、長田さんの終末期の闘病生活について聞きました。

◆◆◆

なぜGWから急激に悪化したのか?

 ――2025年に入っても、2-3月に香港に行くなど、息切れなど体調不良はありつつも比較的元気で過ごしていました。それが、ゴールデンウィークあたりから急激に悪化した印象があります。

 小路 長田さんとは、私も2025年4月に個人的に食事をしているんです。その頃にはすでに「食べられない」とおっしゃっていましたが、イタリアンのコースを完食された。ワインも飲んでいました。

ADVERTISEMENT

亡くなる3カ月半前、2月28日から3月2日まで香港を訪れていた長田さん。息切れや貧血などの体調不良はあったが、連日街歩きする元気があった ©文藝春秋

 ところが、5月の連休ごろから痩せ始めた。「リュープリン」というホルモン療法の注射を打っていたので、本来は太るはず。「痩せる」のは危ないサインでした。5月には、画像上の転移巣も少しずつ大きくなってきていて、血液検査のCRPという炎症の所見、その炎症の影響で血液が固まる力を示す凝固能の数値も高くなっていました。

 一方で、腫瘍マーカーのPSAの値は徐々に上がってはいるものの、そこまで上がっていなかった。末期になると劇的に上がる方もいますが、がんの悪性度が高いとPSAが大きく上がらないこともある。長田さんは後者のケースだったのかもしれません。

小路医師と長田さんの食事会。イタリアンのコースを完食したという(2025年4月5日、小路医師提供)

 ――そもそも、長田さんはなぜ痩せたんですか? 

 小路 やはり食事が取れなくなったからだと思います。

 ――例えば、長田さんが入院して、点滴で栄養を取っていれば改善した可能性はあるんでしょうか?

 小路 一時的にはありえます。外来では、点滴以外にも、缶入りの高カロリー飲料を経口で飲んでもらう話も提案したんですが、そういう食べ物には頼りたくなかったようです。