仕事ばかりかスポーツも旅行も楽しめない激しい腰痛、その原因のひとつである「脊柱管狭窄症」は最近見聞することが多く、日本でこの症状に悩む人は、推定580万人というデータすらある。ノンフィクション作家の山根一眞さんは、長年の腰痛が脊柱管狭窄症へと悪化した。ある日突然、「ガクン」と膝の力が抜けてしまい……。

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最初は脳血管障害を疑った

 2025年5月4日。

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 大型連休の中日、大規模工事が進む新宿駅の西口に降り立ち、すさまじい人波をかき分け家内との待ち合わせ場所へと足早に向かった。午後7時、約束の百貨店に着き、孫のためにと幼児玩具売り場に入って数分後、突然、左脚の力がガクンと抜ける感じがして立っていられなくなった。な、何が起こったんだ!? 家内の肩を掴ませてもらい売り場の外に出て通路の壁際にしゃがみ込んだ。「だいじょうぶ?」と心配する家内に「ちょっと休めば」と強がりを言った。5分もしないうちに脚に力が戻ったので近くのカフェに入り、さっきの脚の異変の原因は何だったかをスマホで検索したところ、「脳血管障害(脳梗塞、脳出血)の典型的な兆候の可能性あり、救急車を呼ぶか速やかに医療機関で受診を」という回答が出た。不安を掻き立てられ、帰宅するや「#7119」(救急安心センター)に夜間受診が可能な病院を問い合わせたが、その時間から脳血管障害に対応できる病院はなかった。電話口の女性に現在の症状を伝えたところ、「差し迫った状態ではないようなので、連休明けに病院で検査をして下さい」と助言してくれた。

MRIによる筆者の手術前の診断画像。この画像では真ん中に通っている腰椎部分の脊柱管が3か所で細く締めつけられていることがわかる(筆者提供)

 最寄りの総合病院で脳のMRI検査(核磁気共鳴画像法による断層撮影)を受けたのは10日後だったが、結果は「脳には何の異常もなし」。ホッとしたものの、ではあの「脚ガクン」は何だったのか――。

 私は、愚かにも肝心なことを見逃していた。