股ぐらが熱い

 1年ほど前から腰痛がひどくなり、歩行難に見舞われていた。歩くと腰痛に加えて脚(おもに太腿)も痛むため先に進めず立ち止まることがしばしばで、外出時にはあらかじめ鎮痛剤を飲むようになった。ドラッグストアには、「腰痛・関節痛・頭痛に飲んで、速く効く」「肩こり、腰の痛みに」「腰痛・筋肉痛・神経痛の緩和」など、これでもかと「腰痛」に効くとアピールする鎮痛剤が並んでいる。腰痛が「治る」わけではないが、服用しておけば外出時に激痛による立ち往生が避けられる。新宿へ出かけた時も、鎮痛剤(主成分・アセトアミノフェン300ミリグラム)のおかげで痛みなく歩けたのだが……。この「脚ガクン」の原因として、私は歩行難をもたらしている腰痛との関係を疑うべきだったが、初めて経験する「脚ガクン」だったため「脳梗塞や脳出血の兆候」という検索結果にのみ眼が釘付けになってしまったのだ。

切除した私の黄色靭帯。重さ0.5g。切除量はこの2倍というから、私は長年たった1gの黄色靭帯に苦しめられてきたことになる(筆者接写撮影)

 後に、「脚ガクン」は腰痛の原因である脊椎の病変で起こるもので、整形外科では「足の脱力」と呼んでいることを知った。また、歩行難、休み休みの歩行を「間欠跛行(はこう)」と呼び、それを引き起こしているのも脊椎の異変という知識もなかった。ちなみに「跛行」とは「片足をひきずるようにして歩くこと」を意味する(「大辞泉」小学館)。脚の脱力と同時に尻の部分に出る灼熱感も代表的な症状だそうだが、新宿駅西口で歩き始めたとき、確かに股ぐらが熱くなり「何だろう」と思ったことを思い出した。ネットで整形外科関連の情報を調べまくり、これらの症状が「脊柱管狭窄症」の典型的なものだと悟った。

 私が最初にきつい腰痛を覚えたのは60代半ば過ぎの2013年で、整形外科の開業医で受診した。医師は、私の腰のX線検査画像を示しながら、「脊椎の一部が横に滑っており、それが周囲を圧迫しているのが腰痛の原因だが、年齢相応の症状」という感じの説明だった。幸い、痛みは投薬でじきにおさまった。7年が過ぎた2020年(72歳)、今度は耐え難いほどの腰痛に見舞われた。そこで先と同じ医院で再診。7年ぶりに撮影した腰のX線検査画像では脊椎のズレは前回とほとんど変わりがなかった。「脊柱管狭窄症」という病名で診断があったかどうかの記憶はない。診察後、牽引装置で腰を伸ばす施術を受けたが、絶叫するほどの痛みで中断、逃げ出してしまった。処方薬を飲みながらおよそ3週間は横になったまま過ごしたが、その運動不足から脚の筋力が驚くほど低下、歩行に支障をきたすようになった。コロナ禍で外出が制限されていたことも筋力低下に拍車をかけたと思う。知人から「歩き方が変、どうかしたの?」と聞かれ、筋力をつけねばとストレッチなどを気まぐれに続けていたが、的外れな対応だった。

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※約1万2000字の全文では、自身の手術を山根一眞さんが解説しています。手術後に現れた驚きの効果は……。全文は月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年3月号に掲載されています(山根一眞「腰痛手術『5泊6日』体験記」)。この他にも「文藝春秋PLUS」では数多くの関連記事をご覧いただけます。

長田昭二「肩ひざ腰のアンチエイジング 著名な専門医が図解でわかりやすく
室伏広治「カラダの不調スッキリ 室伏流4つのメソッド
高野秀行「腰痛探検家 コロナ禍篇

文藝春秋

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腰痛手術「5泊6日」体験記

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作二作全文掲載 鳥山まこと「時の家」 畠山丑雄「叫び」/忖度なき提言 高市首相の経済政策/緊急座談会 暴君トランプの新帝国主義

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