そう語ってくれたのは、開発担当の二村渉さん。長年同社のプリンター開発に携わってきた技術者だ。

開発のきっかけは2016年、役員から「小動物の愛らしさをメカトロニクスで表現して」という技術課題を与えられたことだった。企画案件としてではなく、純粋な技術検討として始まった。それが、結果としてモフリンの独特の存在感を生むことになる。

二村さんは「愛らしさ=生き物らしさ」という仮説を立て、実際の小動物の動きを模倣するところから始めた。しかし、精巧に動きをマネようとするほど、壁にぶち当たった。

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シンプルな動きに絶妙な仕掛け

「多機能にすればするほど、大型で高価になってしまったんです。一般消費者向け商品として発売したいという思いもあったので、それは違うな、と。そこから試行錯誤をして、必要な部分のみに“そぎ落とす”作業をしていったんです」(二村さん)

通常ロボットは、人間で言えば関節に当たる「軸」の数が多いほど複雑な動きが可能だ。ただ軸を増やすほど構造は複雑になり、大型化してしまう。しかし、ここで1957年に世界初の小型純電気式計算機「14-A」を開発以降、“小型化”に磨きをかけてきた同社の技術が光る。

駆動部を2軸まで減らし、首の動きのみに限定して手のひらサイズを実現した。動きは制限されたが、長年プリンター開発に携わってきた二村さんにとって、細やかなモーター制御はお手のもの。「首傾げ」や「うなずき」といったシンプルな動きにバリエーションを付け、生まれたての小動物のような動きを表現することに成功した。

1年ほどでモフリンの原型が完成し、社内の技術展示会で発表した。初めて見るロボットへの反応は両極端だった。目を留めない人は本当に目もくれない。一方で「これは何だ」と前のめりになる人もいる。

「刺さる人には刺さる。これはいけるかもしれない」。二村さんがヒットのニオイを嗅ぎとった瞬間だった。同時に、機能を付加するのではなく“そぎ落とす”という、この後のモフリン開発における方向性が決定づけられた瞬間でもあった。