金正恩が直々に戦術に口出し?「無給監督」の悲哀

 その後、テレビすら満足に見られないほど経済が困窮し、国際交流も制限される暗黒時代を迎える。2010年南アフリカ大会へのW杯出場は、そんな過酷な状況下で生まれた奇跡だった。

 前出のB氏によれば、2009年初めに後継者指名を受けた金正恩総書記が、代表チームを全面的にバックアップしたという。

朝鮮労働党中央幹部学校の創立80年記念行事の一つとして、金正恩総書記の前で試合をしたネゴヒャン女子蹴球団 写真は朝鮮中央通信より

「選手にはユニホームや用具類、移動用スーツまですべて支給され、さらに遠征費として各自1000ドルが配られたと聞いています。金正恩氏はアフリカで働く北朝鮮労働者を応援団として現地に動員し、自らサッカーの戦術にまで口を出していたそうです」

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 金正恩氏といえば、元NBA選手で漫画『スラムダンク』の桜木花道のモデルとも言われるデニス・ロッドマン氏を招くほどのバスケ好きとして知られるが、実はサッカーへの熱量もそれに負けていない。

 2016年から2年間にわたり北朝鮮代表監督を務めたノルウェー出身のヨルン・アンデルセン氏によれば、金正恩氏はイングランド・プレミアリーグの「マンチェスター・ユナイテッド」の熱狂的ファンなのだという。

「金正恩氏はサッカーに強い関心を持っており、国内で行われる代表戦にはすべてスタジアムに足を運んでいました。ただ、私に対して選抜や戦術に注文をつけることはありませんでした。『それは私の仕事だから』と」(アンデルセン氏)

ヨルン・アンデルセン前監督 ©時事通信社

 しかし、そんなアンデルセン氏も監督就任から1年半後、北朝鮮当局から突然「あなたに払えるお金がもうない」と宣告されてしまう。結局、半年間を無給で指導し、そのまま退任を余儀なくされた(未払い金は後に支払われたという)。

左に写るのがキム・ジュエ氏 写真は朝鮮中央通信より

 金正恩氏の官邸には、BBCやCNNを24時間視聴できる特別な部屋が用意されているという。自国の男子代表は出場できなかったが、今月開幕する北中米W杯の熱戦を、「キム・ジュエ」と呼ばれる愛娘とともに、電力不足を気にすることなく優雅にテレビ観戦することになりそうだ。

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